文・写真/増田幸弘(編集者)
 
 

地方の駅舎に漂うモダニズムにはそそられるものがある。

 
 
   

三重県松阪市

レトロな駅前商店街で見つけた

 
   

 松阪駅前には、なかなか味わい深いものがある。なにより駅舎がいい。ただの三階建てコンクリートで、いまどきの駅ビルのようにテナントが入っているわけではない。しかし、屋上に大きく掲げられる「松阪駅」という赤い文字が力強く、圧倒される。そこにいまどきの地方が失った誇りを見て取る。駅舎にある新しい看板はどの駅にも共通するスタイルなので、余計、輝きを放つ。
 駐車場とバスターミナルを通り抜けて横断歩道を渡ると、ベルタウンとの愛称がある商店街がはじまる。松阪に生まれ育った江戸期の国学者・本居宣長が、自分の書斎を「鈴屋」と呼んだのにちなむ。一般公募から選ばれたのだという。もともとはビルの名前だったが、いつしか商店街名にもなった。
 どの店もレトロな匂いにあふれる。いかにも「昭和」である。店頭のワゴンセールにカセットテープやビデオテープが積まれているのを見て、タイムトラベルでもしている感覚に包まれる。「ノーマル」「ハイポジ」といった表示が妙に懐かしい。値段がちがい、高いほうが音がいいと自慢したものだ。ほんとうはたいしたちがいを感じなかったが、そのあたりがアナログならではのお楽しみだった。ケーブル一本で音が激変すると信じられていた。
 スマホのメモリーに保存した音楽を聴き、ネットの映像をストリーミングするのがあたりまえになったいま、こうしたテープがなにをするものなのか、わからない世代もいるだろう。ぼく自身、最後にビデオテープを買ったのは15年近く前で、カセットテープともなればたぶん四半世紀前だ。
 ベルタウンが生まれたのは1978(昭和53)年から3年かけておこなわれた近代化事業で、昭和も終わり近くなってのことである。74年に大規模小売店舗法が施行され、大型店の進出をめぐる衝突が各地でおきたり、コンビニが街に登場した時期にあたる。商店主が危機感を募らせ、力を合わせる試みが全国で相次いだ。
 現在、60あまりの店舗が軒を連ねる。「シャッター通り」にこそなってはいないものの、街道沿いの大型店やショッピングモールに客足を奪われているのは容易に想像できる。だからこそカセットテープに目を奪われたのかもしれない。古いものが、最新のLED電球と一緒に山と売られているのだ。その組み合わせがなんとも不思議だった。
 「いやなに、おじいちゃんおばあちゃんはいまでもテープなんですよ。LEDは電気代が安くなると聞けば、敏感に反応します」
 松阪に暮らす人の説明に、なるほどと思った。そういえば80歳になる母もカセットデッキが壊れたから、まったく同じものを探してと言い出したことがある。カセットのほうがわかりやすいし、操作が変わるのもいやだという。あいにく型番は変わったが、10数年前とほとんど同じ、わずかな改良にとどめた機種を見つけた。はやりすたりが激しいなか、メーカーも需要を心得ているようだ。
 ワゴンセールのカセットテープは、商店街が住人に寄り添っているからこそなのだと、ふと気づく。街もまた住人とともに年を重ねていくということだ。それに近ごろはカセットテープが見直され、レコードも「ヴァイナル」と呼ばれて復権を果たしている。新しいCDのほうが先に消えかねないのがおもしろい。より高性能な規格が次々に出ては消え、USBケーブルだけでいったい何本、家に眠っているのだろう。そんなことを考えながら、商店街をぶらついた。

 

 

電気屋さんの店頭に、カセットテープが山と積まれていた。

 
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