文・写真/増田幸弘(編集者)
 
 

御城番屋敷の部屋。端正な美しさのなかに、日々を大切にしていた暮らしが見て取れる。

 
 
   

三重県松阪市

石垣と商家と青空と

 
   

 江戸時代の松阪は、大阪と近江(滋賀)と並ぶ経済の中心だった。とくに松阪は強く、「江戸名物、伊勢屋、稲荷に犬の糞」なんて言われるほど、伊勢出身の人が江戸に集まり、商いを繰り広げた。江戸といっても漠然としているが、今日の日本橋界隈におもに集まっていたらしい。いまの松阪を歩いてもピンと来ないのだが、その名もずばりの松阪屋をはじめ、三越やイオン、財閥の三井など、歴史は綿々と受け継がれている。だからこそ、「松阪商人」や「伊勢商人」という言葉が死語にならないのだろう。
 それにしてもいったいなぜ松阪だったのだろう。木綿の産地だったのもあるだろうが、全国各地でつくられていたこともあり、それだけでは説明できない。事実、木綿の生産量はいまでは考えられないほど多く、統計がとられるようになった明治時代、世界一の輸出量を誇っていた。
 歴史をひもとくと松阪商人が強かった理由のひとつに、いまで言うマーケティングや宣伝に強く、売り方を工夫したことがある。反物を丸ごと買うのが普通だった時代に必要な分だけ切り売りしたり、現金払いでは安くするなど、現代につづく商慣習を根づかせたのである。イオンの興隆を見れば、なるほどこういうことかとなんとなく想像がつく。
 質の高い製品をいくらつくったところで、売り方をまちがえれば在庫の山になるのは今も昔も変わらない。それでもなぜ伊勢商人は次々に商いを成功させたのだろうか。それだけ商才にたけていたということか。あれこれ思いをめぐらせながら、三井家の発祥地や、木綿仲買商だった豪商たちの家を見て回る。国学者である本居宣長はそんな商家のぼんぼんだったというのも興味深い。
 松阪が本店で、江戸はあくまで出店。だから主人は本店にいて、出店はスタッフに任せるのが伊勢商人の流儀だった。「松阪はことによき里にて、富る家おほく、店といふ物をかまへおきて、主は国にのみ居て遊びをり」と宣長は描写している。地方再生の理想に思えるが、インターネットの時代ならいざ知らず、引きこもりながらアイデアを次々に実現させ、商売を成功させるのは至難の業のはずだ。だから街を漠然と歩いていても、江戸時代といまがなかなかつながってこない。
 「お伊勢参りですよ。参拝の街道筋にあたるこの地には、全国各地から大勢の人が訪れました。参拝客の長旅をねぎらい、食事を用意したりしてもてなしました。それで自然と全国の情報が集まってきたのです」
 「松阪商人の館」を見学していると、スタッフのひとりがそう説明してくれた。なるほど街道がインターネットの役割を果たしていたわけだ。参拝客をもてなすことを「接待」というが、それも合点がいく。
 道は松阪城跡に通じた。なにより石垣の美しさに目を奪われる城だ。城主の蒲生氏郷が安土城の築城に携わったことから、松阪にも穴太(あのう)衆が呼び寄せられた。すぐれた技術はほんとうに何百年も色あせず、人の心を打つ。どんな城だったのだろうと想像しながら空を仰ぐ。作家・梶井基次郎の『城のある町にて』の舞台なのを思い出し、「悲しいまで晴れていた」という一節が頭に浮かぶ。
 城下の一角に御城番屋敷がある。当時、武家が住んだのだという。きれいに整備され、なんともいえない風情が漂う。内部が公開されているところがあるのだが、賃貸住宅として普通に市民が暮らしていたりもする。それを知り、空きがあったらぜひ住んでみたいと思った。

 

 

松阪城に残る穴太積みの石垣。天守閣がないいまも、城を思い描かせる力強さがある。

 
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