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【東京エンタメ堂書店】

話題映画の原作本

 この秋、話題の映画が次々と公開されています。原作もあわせて楽しみませんか? 今回は、映画の原作本を集めました。 (文化部・岩岡千景)

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◆若者の「ドロドロ」鋭く

 <1>朝井リョウ著『何者』(新潮文庫、六三七円)を三年前の直木賞受賞時に読み逃した皆さん、映画も公開されているこの機会にぜひ、読んでみませんか。

 『何者』は、就職活動の対策をするために集まった五人の若者をめぐる物語です。

 実は私は、この本を最初に手にした時、最後まで読み通せませんでした。物語の中の若者たちが、就職に対する自分の努力や意識を、ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で確かめるように発信する痛々しさに「ついていけない」感じがしたからです。

 ところが、図書館関係者が集まる会合で、ある女性から「若い人たちも、同じように心にドロドロしたものを抱えているのを知ってほっとした」という感想を聞いて再読。そうした感想を引き出す驚きの終盤に圧倒されました。

 どう「ドロドロ」しているかは小説や映画を見てほしいのですが、物語は現代の一断面をえぐく鋭く切り取っています。そして、仕事や人生へのさまざまな問いを投げかけます。

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◆逃げ場なき慟哭が迫る

 公開中の映画「怒り」の原作、<2>吉田修一著『怒り』(中公文庫、(上)(下)とも六四八円)も、大きな余韻の残る作品です。

 東京都内で起きた残忍な殺人事件。その一年後、東京、千葉、沖縄で、犯人に似た身元不詳の男が現れます。「愛する人は、犯人なのか?」。読み手はいつしか物語に引きこまれ、登場人物と一緒に疑心暗鬼になって「男」の動向を追ってしまいます。

 この小説がすごいのは、ミステリーとして読ませるだけでなく、今の社会で泣いても叫んでも、どうにもならない状況に置かれた人々の慟哭(どうこく)を描き出していることです。その日その日の労働でどうにか生き抜く若者、米兵に蹂躙(じゅうりん)される少女…。

 映画はその小説の面白さや迫力をあますことなく伝えています。そして、見終えた後、そうした人々の慟哭が、森山未來(みらい)さんや広瀬すずさん、宮崎あおいさんら出演者の迫真の表情とともに心に強烈に残ります。

 映画公開の前に刊行された吉田修一ほか著『小説「怒り」と映画「怒り」』(中央公論新社、五〇〇円)も読むと、そのすごい演技の背景がわかります。役作りのために、妻夫木聡さんと綾野剛さんは実際に同居。森山未來さんも、沖縄の無人島に独りで野宿したそうです。

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◆天国の母の思いが届く

 最後に<3>吉田康弘著『バースデーカード』(角川文庫、六九一円)を紹介します。十歳で母を亡くした紀子の誕生日に毎年、天国の母から届くカード。映画の監督と脚本を手がけた吉田さんによる小説化で、心に響く物語がさわやかな筆致でつづられています。本も映画も、涙が止まらなくなります。

◇あなたの「1作」教えてください

 あなたの好きな映画(旧作でもOK)の原作小説や漫画をお知らせください。この面で紹介します。好きな1作のタイトルと理由をひと言書き、住所、名前、年齢、電話番号も明記して、11月10日までにメール=t-bunka@chunichi.co.jp=かはがきで、〒100 8505 東京都千代田区内幸町2の1の4、東京新聞文化部「エンタメ堂書店」へ。

 

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