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【東京エンタメ堂書店】

気になる題名 住野よる作品 「君の膵臓をたべたい」って…

 2016年も早いもので、あと2カ月。今年話題の小説で気になる題名ナンバーワンといえば、『君の膵臓(すいぞう)をたべたい』ではないでしょうか。2作目の『また、同じ夢を見ていた』とともに、今注目の住野よるさんの作品を紹介します。(運動部総括デスク・谷野哲郎)

<1>『君の膵臓をたべたい』(双葉社、一五一二円)

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 あまりにもインパクトのあるこの題名を皆さんも一度は見たり、聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。住野よるさんの<1>『君の膵臓をたべたい』(双葉社、一五一二円)は、昨年六月に発売され、今年の本屋大賞第二位に輝いた注目作です。

 猟奇的なタイトルとは違って、内容は切なさ全開の青春小説です。重い膵臓の病気で余命一年と宣告されている高校二年生の桜良(さくら)と、彼女の秘密を偶然知ってしまったクラスメートの「僕」が織りなす物語。最初は明るく無鉄砲な桜良に振り回される「僕」に笑わされ、最後は衝撃的な結末に泣かされました。

 物語の鍵となるのは、やはり題名でしょう。文中には「君の膵臓をたべたい」というセリフが何度か出てくるのですが、その意味に気付いたときの感動といったらありません。ラスト八十ページは涙、また涙。気が付いたら何度も読み直し、セリフと文章をかみしめていました。

 中高生に「キミスイ」と略され親しまれるこの作品は、映画化が決定。ダンスロックバンド・DISH//の北村匠海(たくみ)さんと新人女優・浜辺美波さんの主演で、一七年夏に公開されます。こころがきしむような喪失感を皆さんも体験してみてください。

<2>『また、同じ夢を見ていた』(双葉社、一五一二円)

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 インターネットの小説投稿サイトに載せた『君の膵臓をたべたい』が話題を集め、小説家デビューを果たした住野よるさん。名前や文体から女性をイメージする人もいますが、実は男性なのだとか。そんな住野さんは今年二月に二作目となる<2>『また、同じ夢を見ていた』(双葉社、一五一二円)を出版。前作とは違った世界観で読ませます。

 主人公は小学生の女の子・奈ノ花。学校で友だちがいない彼女は放課後、子猫と一緒にいろいろな人に会いに行くのが日課です。手首に傷がある「南さん」、季節を売っているという「アバズレさん」、一人暮らしの優しい「おばあちゃん」。奈ノ花が彼女たちと交わす何げない会話にこころが締め付けられます。

 おませな奈ノ花には口癖があります。「人生とは、○○みたいなものね」。例えば、「人生とは、スイカみたいなものよね」と言い、「ほとんどの部分は噛(か)んで飲み込めるのに、食べてると口の中にちょっとだけ飲み込めない部分が残るの」と周囲を苦笑させます。少しSF的な物語は、今がうまくいかない人、やり直したいことがある人に読んでもらいたい一冊です。

 内容も登場人物も違うこの二作。実は共通点があります。どちらの小説にもサンテグジュペリの『星の王子さま』が登場すること。文中にさらりと出てくるだけなのですが、筆者にはこの名作が、隠し味になっているように感じられて仕方がありません。

 『星の王子さま』にはこんなセリフがあります。「こころで見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」。不思議と二作ともこのセリフが似合います。こころで見る、こころで感じる住野作品といったら、ほめすぎでしょうか。十二月には三作目の『よるのばけもの』を出す予定という住野さん。次回作が今から楽しみです。

 

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