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【東京エンタメ堂書店】

集英社・文芸書編集部 鯉沼広行編集長 質の高い作品を

 文芸編集部文芸書編集(文芸書編集部)は、フィクションを中心に単行本の編集を行っています。また、文芸単行本の公式サイト「WEB文芸RENZABURO」(レンザブロー)を運営し、翻訳単行本も手がけています。

 一般に流通する書物は、読者の方に買っていただくことを前提に刊行されています。したがって、書物にも経済財としての性質がありますが、それとは別に文化的財としての性質も備わっています。小説に限りませんが、文化産業が生み出すコンテンツは文化的価値を内包しており、文芸書編集部としては、そのことを強く意識しています。また、文芸単行本の刊行には、ある作品の完成形を初めて世に送り出すという面があり、緊張感をもって業務にあたっています。

 おかげさまで、近年、多くの読者の方に支持される作品を刊行することができました。十七年の歳月をかけて完結した北方謙三さんの「大水滸伝シリーズ」(全五十一巻)の単行本最終巻は昨年五月に刊行されましたが、刊行中の文庫を含めたシリーズの累計は九百九十万部を超えています。昨年七月に刊行させていただいた池井戸潤さんの長編小説『陸王』はベストセラーとなり、今年の十月にテレビドラマ化されることが、昨年末に発表されました。

 先に、文化的価値について触れましたが、文芸単行本は、さまざまな文学賞の対象にもなります。荻原浩さん『海の見える理髪店』(第百五十五回直木三十五賞)、北方謙三さん「大水滸伝シリーズ」(第六十四回菊池寛賞)、浅田次郎さん『帰郷』(第四十三回大佛次郎賞)、岩城けいさん『Masato』(第三十二回坪田譲治文学賞)、リービ英雄さん『模範郷』(第六十八回読売文学賞)など、この一年間で、いくつもの作品が受賞作となっています。こうした受賞は当該作品の力によるもので、文芸書編集部にとっても嬉(うれ)しい出来事です。

 出版不況という言葉を、かなり長い間、耳にしているような気がします。しかし、文芸書編集部としては、外的な状況を的確に把握しながら、著者や読者の方々の信頼を得られるよう地道な努力を重ね、書店や取次(とりつぎ)など出版に携わる各方面にも良い意味で寄与できるように、質の高い作品をできるだけ多くの読者に届けていきたいと願っています。

◇お薦めの3冊

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◆教育めぐる大河小説

 <1>森絵都著『みかづき』(1998円) 昭和から平成にかけての塾業界を舞台に、理想の教育を求めて奮闘する家族3代を描いた大河小説。児童文学でデビューし、子どもを見つめ続けてきた著者の集大成的な一冊です。「王様のブランチブックアワード2016大賞」を受賞し、2017年本屋大賞にもノミネートされました。熱くて厚い本ですが、一気読み間違いなしの傑作です。

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◆英国人陶芸家の生涯

 <2>原田マハ著『リーチ先生』(1944円) アート小説の優れた書き手として定評のある著者が、日本とも関わりの深いイギリス人陶芸家バーナード・リーチの生涯を描いた長編小説です。深い知識をもとに描かれた小説であり、想像力あふれる味わいのある文章が、リーチの魅力的な人物像を鮮やかに浮かび上がらせます。

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◆退職警官が事件追う

 <3>柚月裕子著『慈雨』(1728円) 警察官を定年退職し、妻と四国遍路の旅に出た男。16年前に起きた幼女殺害事件に対してある後悔を抱えており、それと酷似した事件の発生を旅先で知り、退職した身で事件を追い始めます。ぐいぐい読ませるミステリーであり濃厚な人間ドラマでもあります。読み終えたときにタイトルが胸を打ちます。

◆筆者の横顔

 <こいぬま・ひろゆき> 文庫編集部、小説すばる編集部、新書編集部等を経て、現職。近年担当した作品に、島本理生『イノセント』、北方謙三『岳飛伝 十七 星斗の章』、桜木紫乃『裸の華』、花村萬月『日蝕(ひは)えつきる』、朝井まかて『最悪の将軍』など。

 

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