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【東京エンタメ堂書店】

「働く」を考える4冊

 4月になり、街で真新しいスーツに身を包んだ若者を見かける季節になりました。新社会人や就活生の中には仕事について考え、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。今回は仕事とは何かについて示唆に富む4冊を用意しました。 (運動部総括デスク・谷野哲郎=似顔絵)

◆挑戦

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 最初はこの人の作品からいきましょう。原田マハさんの<1>『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫、700円)は、累計20万部を超える人気小説。最近では「お仕事小説」の代表に挙げる人も多いのではないでしょうか。

 ごく普通のOL・こと葉は幼なじみの結婚式のあいさつで大失敗。それをきっかけに言葉の世界に興味を持ち、「スピーチライター」に転職します。演説の草案を考えて政治家らを陰で支える特殊な職業ですが、読みやすい文体なので、すんなり物語に入っていけます。伝説の師匠に弟子入りし、政権交代を目指す野党に抜てきされた彼女の運命は−。新しくチャレンジしてみたい人にお薦めです。

◆覚悟

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 垣根涼介さんの「君たちに明日はない」シリーズも外せません。主人公・真介が企業の依頼を受け、リストラの代行をするという異色の連作小説。毎回、さまざまな職業の相手と向き合い、仕事とは何かを浮き彫りにします。

 リストラという暗い話なのに、希望を感じるのがこの作品の素晴らしさ。中でも<2>『借金取りの王子』(新潮文庫、680円)は、過酷な消費者金融で働くイケメン男性が年上で元ヤンキーの女性上司に恋をする話で、何度読んでも胸が熱くなります。覚悟や決断の大切さについて学びたい方はどうぞ。

◆誠実

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 夏川草介さんの<3>『神様のカルテ』(小学館文庫、596円)は、人の命を扱う医者という職業に悪戦苦闘する物語。主人公の「一止(いちと)」という珍しい名は「一に止まると書いて正しい」という意味が込められているのだそう。

 一止は患者からこう声を掛けられます。「人は生きていると、前へ前へという気持ちばかり急いて、どんどん大切なものを置き去りにしていくものでしょう。本当に正しいことというのは、一番初めの場所にあるのかもしれませんね」。誠実という言葉が感じられる一冊です。

◆独創

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 これらの多くが映像化され、お茶の間に届けられました。そして、5月からNHKで放送予定なのが高田郁(かおる)さんの「みをつくし料理帖」シリーズ(写真は<4>9冊目の『美雪晴れ』=ハルキ文庫、670円)。江戸の料理屋で腕をふるう女性料理人・澪(みお)が親友を助けるため、困難に立ち向かう時代小説。作中のおいしそうな料理も魅力ですね。

 彼女の武器は独創性と丁寧さ。「とろとろ茶わん蒸し」「ふっくら鱧(はも)の葛叩(くずたた)き」など、自分だけのオリジナル料理を安い値段で提供し、客の心をつかんでいきます。決しておごらず、自分にしかできないことを一つ一つこなす。仕事とはかくあるべきという模範が書かれています。

 澪はある人からこう問い掛けられます。「どのような料理人を目指すのか。どんな料理を作ることを願うのか。よく見据えることです」。文中の「料理」を「仕事」に置き換えると、答えが見えてくるかもしれません。フィクションからでも学ぶものはあります。本を読むと自分が働く理由が、きっと見つかります。

 

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