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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>3人の「神さま」を悼む

 大好きな原田治さん、ディック・ブルーナさん、そして、佐藤さとる先生が相次いで天国へ旅立たれました。子ども時代からずっと、あんなにも夢中になれる作品を生み出してくださったことに感謝をこめて、今回は三人の本を。

    ◇

 十代の頃、オサムグッズを集めていました。可愛(かわい)いだけでなく、洗練されたデザインや色使いにワクワクしました。

 また、ミスタードーナツのグッズや、東横線の「ひらくドアにごちゅうい」のくま、カルビーのポテト坊やなど、気がつけば原田治さんのイラストやデザインは、いつも身近にありました。そんな原田さんが、「美しいもの」についてつづったエッセー集。

◆アートは日常の中に

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 <1>原田治著『ぼくの美術ノート』(亜紀書房、二一六〇円)

 旅先で見かけたタイル、お土産用の木彫りの熊、歌舞伎座の看板、ポチ袋や本の装丁、ガラスの器など、自分で見つけたお気に入りのものを愛(め)でることの楽しさ、大切さ、喜びがたくさん詰まった本です。

 美術は美術館だけで鑑賞するものではない。日常の中にも目を凝らせばアートはそこここにある。そして、美を感じる能力は誰にでもあるということに気づかせてくれます。

◆シンプルの秘密

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 <2>芸術新潮編集部編『ディック・ブルーナのデザイン』(新潮社とんぼの本、一五一二円)

 オランダの絵本作家でありグラフィックデザイナー、そして、世界一有名なうさぎ、ミッフィー(うさこちゃん)の生みの親であるブルーナさん。そのブルーナさんのこれまでの絵本はもちろん、本の装幀(そうてい)、ポスター、タイポグラフィーなどの作品を、本人のインタビューを交えて紹介した、見て読んで楽しいビジュアルブックです。

 絵本作りの過程を追ったページでは、あの究極にシンプルな線、わずか六色の絶妙な配色、繊細な構図などの秘密が、よくわかります。

 また、アトリエ訪問のページもあり、運河のある素敵(すてき)な石畳の街、オランダ、ユトレヒトに行ってみたくなります。

◆希望詰まった完結編

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 <3>佐藤さとる著『小さな国のつづきの話』(講談社青い鳥文庫、六二六円)

 コロボックル物語は全五巻(と二冊の番外編的短編集)が出ていて、どの本も素晴らしいのですが、今回は、最終巻をご紹介させてください。

 この本は、それまでの四冊とはかなりテイストが違います。なんと図書館に勤める主人公の正子が、コロボックル物語を読み、佐藤さとる先生にお手紙を書くんです。「わたしが小人を見たといったら、信じていただけますか?」と。

 しかも、本文中に先生ご本人も登場しますし、これまでの四冊に出てきたなつかしい登場人物たちとも再会できます。そんな嬉(うれ)しいサプライズと新しい出会いや希望の詰まった完結編なのです。また、有川浩(ひろ)さんによる続編『だれもが知ってる小さな国』も話題です。こちらも、ぜひ。

 わたしも、小学五年生のときに『だれも知らない小さな国』を読んでから、このシリーズに夢中です。なんども読み返してボロボロになったその本を、いまでも大切に持っていますし、作家に憧れたのも、この本がきっかけです。

 そして、それから十数年後、佐藤さとる先生にお会いすることができました。感動と緊張で挙動不審なわたしに、先生は、いろいろなお話をしてくださり、宝物のような時間を過ごすことができました。

 心から好きだと思える本や絵との出会いは、人生を左右するほど強い力があります。

 子ども時代のわたしに文章や絵で世界の豊かさを教えてくれた三人の“神さま”に、心からありがとうを伝えたいです。

  ※毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。『作家になりたい!』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

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