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【東京エンタメ堂書店】

「民族派」を返上! 海外の鉄道を楽しむ

 「日本の鉄道ファンは民族派だ」と鉄道ライターから嘆きの声を聞きました。国内にしか関心がないのです。そんな民族派も海外に行きたくなる本を集めてみました。(科学部長・吉田薫)

◆「ヒーコッコ ヒーコッコ」

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 まず<1>阿川弘之さんの『南蛮阿房(あほう)列車』(新潮文庫、品切れ。電子書籍あり)。乗り物大好きの文化勲章作家。作家仲間や編集者、旧友たちを「汽車に乗せてしまえ」と、「乗り鉄」の旅に出ます。

 たとえばマダガスカルの文字通りの鈍行列車。三百七十キロを十数時間かけて走ります。初めはエキゾチックでのんびりした旅を一同喜んでいたのですが、最後になると同行の海軍同期(実は駐マダガスカル大使)が怒りだします。

 「東海道線で東京に近づいているとすると、どのあたりだ。横浜か、川崎か、品川か」と問い詰められ、しどろもどろになるのが、何ともいえずおかしい。帰りの飛行機で、大使の小さな娘が「おじちゃん、あの汽車長くてほんとに疲れたわねえ」と駄目を押します。

 台湾では日本びいきの軍艦マニアの案内で各地を回ります。最後に一言、日本人観光客(当時)の行儀の悪さを、この台湾人が指摘するくだりが胸に刺さりました。

 各章を通じて、一流作家ならではの人物造形と美しい風景描写が貫かれ、また鉄道の正確な知識や、「ケタタッタッタ ケタタッタッタ」「ヒーコッコ ヒーコッコ」など独特な擬音表現が見事です。

 タイトルは内田百〓(ひゃっけん)「阿房列車」をなぞったものですが、内容ははるかにしのいでいると思います。ただこれが書かれたのは一九七〇年代半ばであり、登場人物は多くが亡くなってしまいました。

◆101すべて乗って撮った本

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 最近の海外の鉄道事情を知るのにいいのは、フォトジャーナリスト櫻井(さくらい)寛さんの<2>『知識ゼロからの憧れの鉄道入門』(幻冬舎、一四〇四円)です。百一の有名な鉄道を網羅しています。世界遺産ダージリン・ヒマラヤ鉄道や、世界一の豪華列車といわれる南アフリカ共和国のザ・ブルートレインなど、全部自分で乗り、全部自分で撮った写真というところがすごい。櫻井さんとは、JR九州のプレスツアーでご一緒したことがあり、ツアーバスの中で鉄道クイズを出して場を和ませる面白い人でした。本書でも随所にコラムをはさみ、エンターテイナーぶりを発揮しています。

◆東欧の小さな町まで

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 さらにマニアックな本として<3>『世界の路面電車 ビジュアル図鑑』(北海道新聞社、二九一六円)があります。筆者の杉田紀雄さんは北海道在住の技術者で、退職後、世界各地の路面電車を撮影しています。本書には全四百十五都市の電車が紹介されています。ロシア、東欧圏の小さな町も多く、その執念に驚かされます。ウソリエ・シビルスコエとか、クラマトルスクとか、完全に初耳でした。また米国でクラシックな路面電車が続々復活していることも、本書を通じて知りました。

 海外には日本ではとうになくなってしまった情緒あふれる鉄道がいっぱいあります。ネットやSNSで画像がたくさん手に入る時代でも、心動かされる光景に出合うことができるでしょう。

※〓は、聞の耳が月

 

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