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【東京エンタメ堂書店】

「時間旅行」のコースはいかが?

 あの日に戻りたい。そう思ったことはありませんか? 今週末の6月10日は時の記念日。ということで、今回は「時間旅行」がテーマ。お薦めの4冊をコース料理風に提供させていただきます。

 (運動部総括デスク・谷野哲郎)

◆<1>『コーヒーが冷めないうちに』

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 最初は前菜から。口当たりの良さが評判の<1>『コーヒーが冷めないうちに』(川口俊和著、サンマーク出版、一四〇四円)はいかがでしょう。今年の本屋大賞ノミネート作。累計五十万部のベストセラーになっております。

 過去に戻れる不思議な喫茶店フニクリフニクラ。しかし、この奇跡には「座った席から移動できない」「戻れる時間はコーヒーを入れてから、冷めてしまうまで」など数々の制約がありました。それでも構わないと家族や恋人に会いにいく四人の女性の物語。本業は舞台の脚本・演出家という川口さん。涙でさわやかな読後感が味わえます。

◆<2>『クロノス・ジョウンターの伝説』

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 フルコースにスープが欠かせないように時間小説にはタイムマシンが欠かせません。<2>『クロノス・ジョウンターの伝説』(梶尾真治著、徳間文庫、九五〇円)はタイムマシンをめぐる連作短編集。心温まるSFロマンスです。

 表題のクロノス・ジョウンターとは物質過去射出機のこと。狙った過去に人を飛ばすことができますが、滞在後、反動で現代には戻れず、未来に飛ばされてしまいます。もう二度と会えないのに、愛する人を救おうと過去改変に挑んだ人々が迎えた結末は−。難病で亡くなった初恋の人を助けるため、医者になる女の子を描く第四話がお薦め。

◆<3>『ハリー・オーガスト、15回目の人生』

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 メインディッシュは濃厚な味わいの<3>『ハリー・オーガスト、15回目の人生』(クレア・ノース著、角川文庫、一二五三円)を用意しました。主人公ハリーは死んでも記憶を残したまま、生まれ変わる特異体質の持ち主。一九一九年からひたすら同じ時代を繰り返します。

 話が急転するのは、同じ体質のヴィンセントに会ってから。生まれ変わりで財産や科学的知識を蓄積し、歴史を書き換えようとするヴィンセントと次第に敵対。追いつ追われつの死闘を繰り広げます。同じ過去を繰り返す「ループ」ものの上作。友情と裏切り、ほろ苦い大人の味わいを堪能できることでしょう。

◆<4>『君の名残を』

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 締めのデザートは幻の逸品をどうぞ。<4>『君の名残を』(浅倉卓弥著、宝島社文庫(上)(下)、品切れ)は、平家物語の世界に居合わせたらという設定。手塚治虫さんの名作「火の鳥」の小説版とでも言えばいいのでしょうか。筆者にはタイムスリップ小説の最高傑作です。

 幼なじみの高校生・白石友恵と原口武蔵はある日突然、平安時代末期に飛ばされます。二人は離ればなれになり、それぞれ木曽義仲、源義経の元に。そして歴史の鍵を握る人物として時代の渦に巻き込まれていきます。二〇〇四年の作で残念ながら品切れとなっていますがネットで古書の購入は可能。時のはかなさの余韻をお楽しみください。

 H・G・ウェルズの『タイム・マシン』が出版されたのが、一八九五年のこと。これまで「時間旅行」をテーマにした作品は国内外で創作され、多くの人に愛されるようになりました。あの日に戻りたい。やり直したい。人気の理由は、誰もがそんな思いを抱えているからなのかもしれません。

 

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