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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>仕事ってなんだろう

 仕事ってなに? 働くってどういうこと? 将来、どんなことがやってみたい? 自分にはどんなことができそう? 仕事のことを考えると、理想と現実、希望や不安が交互にやってくる。今月は、仕事を考える本を3冊。

◆考える前に走りだす

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 まずは、<1>松田奈緒子『重版出来(しゅったい)!』(小学館、既刊九巻、第一巻五九六円)。

 出版社の新米漫画編集者を主人公に、漫画家や本の装丁をするデザイナー、本屋さんなど、漫画に関わるたくさんの仕事の実情や裏側をリアルに知ることができる漫画です。

 漫画好きはもちろんですが、仕事を考えるという意味で、ぜひ読んでほしいのは、一巻に出てくる小泉くんの話です。大手出版社に入社したものの希望した部署ではない営業に回され、やる気が出ず、異動願を出し続けて三年目。

 ところが、主人公や上司など、熱い思いで全力で働く人たちを見て考え直し、やっと嫌な仕事に積極的に取り組む気になります。そして、小泉くんが、初めて働くことの意味や面白さに気がついていくシーンは、たくさんの示唆に富んでいると思います。

 どんな仕事もその醍醐味(だいごみ)は実際に働きだしてから、初めてわかるもの。夢だった仕事につけても失望することもあるし、嫌なこと、辛(つら)いことは必ずあります。逆に不本意だった仕事が、意外に自分に向いていて楽しいということも。

 いろいろ考える前に走りだす。目の前のチャンスに飛び込んでみる。すると小泉くんのように新しい風景や自分が見えてくるかもしれません。

◆「好き」を極めた世界

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 漫画の次は、アニメ制作の裏側が覗(のぞ)けるビジュアルブック<2>『ウェス・アンダーソンの世界 ファンタスティックMr.FOX』(DU BOOKS、四一〇四円)。

 『チョコレート工場の秘密』などイギリスの国民的児童書作家ロアルド・ダールの『すばらしき父さん狐(ぎつね)』がストップモーションアニメになりましたが、そのメーキングブックです。

 ダールの本を読んで育ち、中でも一番好きだったこの本を、どうしても映像化したいと、アンダーソン監督がダール夫人に許可をもらいに行くところからこの本は始まります。ダールの暮らした家や庭、書斎の写真やダール夫人のインタビューもあり、小説ファンも楽しめる一冊です。

 そして、パペットとその衣装、舞台装置や美術など、一つの映画が作られるのには、たくさんの専門の仕事をする人たちがいて、ものすごい手間暇をかけ、細部までこだわり抜いて作られていることがわかります。

 その労力は想像以上で、この映画の製作中に監督がスタッフとやりとりしたメールは六万五千通だそうです。その監督の“好き”をとことん極めたミニチュアの世界は、ページを眺めているだけで、うっとりしますよ。

◆「お役所仕事」の意味が

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 漫画、アニメとエンタメ/アート系の仕事が続いたので、最後は公務員が主人公の小説<3>荻原浩『メリーゴーランド』(新潮文庫、六八〇円)。

 過労死続出の東京での仕事を辞め、地元にUターンした市役所勤務の主人公。赤字のテーマパークを立て直す仕事を与えられますが…。

 「お役所仕事」という言葉の意味が、この本を読むとよくわかります。また、巨額の税金で造られ、誰も使わず誰も責任は取らず、赤字だけがどんどん増えていくハコモノの造られる理由や、市長選挙での権力闘争などの裏側もわかり、読みごたえがあります。

 こう書くと堅い本のようですが、主人公の昔の劇団仲間が登場するシーンでは爆笑してしまいますよ。ぜひ一読を。

  ※毎月第四月曜掲載。

 <こばやし・みゆき> 児童文学作家。『作家になりたい!』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

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