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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>気持ちによりそう受賞作

 本を探すとき、本屋大賞などの賞を参考にする人も多いはず。そこで10代なら、ぜひ講談社児童文学新人賞に注目してください。10代の気持ちによりそう小説がたくさんありますよ。今回は最新の受賞作3作をご紹介します。

 講談社児童文学新人賞は一九六〇(昭和三十五)年から続く歴史のある児童文学賞です。第一回は松谷みよ子さんの『龍の子太郎』、第二回は立原えりかさんの『でかでか人とちびちび人』、第十五回では、柏葉幸子さんの『霧のむこうのふしぎな町』が受賞しています。

 また、福永令三さんの『クレヨン王国』、昨年、アニメ映画化されて話題になった斉藤洋さんの『ルドルフとイッパイアッテナ』などの人気シリーズ。森絵都さん、はやみねかおるさん、椰月美智子さん、風野潮さんなどの人気作家もたくさん輩出しています。

 一昨年の受賞作、戸森しるこさんの『ぼくたちのリアル』は、産経児童出版文化賞フジテレビ賞、児童文芸新人賞とトリプル受賞。そして、今年の青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年の部の課題図書に選ばれているので、もう読んだ人も多いのでは?

 そして、発売されたばかりの、最新の新人賞三作にも要注目です。

◆人は見た目なの?!

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 受賞作の<1>吉田桃子『ラブリィ!』(講談社、一四〇四円)は、容姿をテーマにした作品で、「人は結局見た目がいい方が得なのか?」と疑問を抱く中学生男子、拓郎が主人公。 

 映画監督志望の拓郎は、クラスで、みんなに「ブス」とバカにされている涼子に不思議な魅力を感じているし、背が低くて髪が薄いけど、優しい渉(わたる)叔父さんのことが大好き。

 クラスで行われる女子顔面ランキング。美魔女コンテストにイケメンシェフ、美しすぎるスーパー店員など時事ネタも満載で、コミカルに時にシリアスに、「容姿」のことを考えさせてくれる良作です。見た目に悩む十代は必読。

◆子供の貧困、痛切な叫び

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 佳作の<2>栗沢まり『15歳、ぬけがら』(講談社、一四〇四円)は、子供の貧困をドキュメンタリータッチで描いた小説です。

 公園の公衆トイレで顔を洗う女子中学生だなんて、死んでもばれたくない! 心療内科に通う、寝てばかりで何もしない母親。家はゴミ屋敷。食事は給食が頼りなのに、夏休みは、どうしよう?

 主人公の悲痛な叫びに読むのが辛(つら)くなりますが「十八歳未満の子供の七人に一人は貧困」という現実を突きつけられ、目をそらしてはいけない問題だと痛切に感じます。 

 ラストシーン、自分で考え、行動を起こす主人公の勇気の一歩に心を揺り動かされます。

◆自分が主役でなくても

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 同じく佳作の<3>落合由佳『マイナス・ヒーロー』(講談社、一四〇四円)は中学校のバドミントン部が舞台。誰よりも秀でた能力を持ちながら、すべての大会で準優勝どまりの、ゆるふわ少女、海(うみ)。小学生時代、バドミントンに挫折した経験のある少年、凪人(なぎと)は、そんな海がはがゆい。マネージャーとして、海を導くことになりますが−。

 自分の経験や知識は、自分が主役でなくても活(い)かす方法はある。発想を転換することで、マイナスをプラスに変えることができる。今まで、自分の欠点と弱点と失敗ばかりを見つめてきた凪人が、海と認め合い、頼り合うことで、過去の自分を乗り越えていく。

 辛い経験はいつか力に変わる。人生は必ず切り開いていける。勇気をくれる力作です。

 そして、じつは、わたしは、昨年からこの賞の選考委員をしています。十代からの小説の応募も待っています!

  *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。新刊『作家になりたい!(2)』(講談社青い鳥文庫)は、八月十二日ごろ発売。

 

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