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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>言葉も味わう「食」の本

 あなたは、今日、なにを食べましたか? 人は食べなければ死んでしまう。つまり、食べることは生きること。生きることは食べること。心に栄養をくれる、美味(おい)しい言葉と絵を味わえる「食」にまつわる3冊を紹介します。

   ◇

◆「食べる」の深遠

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 食卓につくことは、自分の人生の席につくこと。人生とは誰かと食卓を共にすること。

 食をテーマにした詩集<1>長田弘『食卓一期一会』(晶文社、2484円)は絶対に読んでほしい一冊。この詩集を初めて読んだ時、料理のレシピが、料理をすることが、食べるという当たり前の日常が、こんな風に深遠な「詩」になるということに衝撃を受けました。

 <かつおぶしじゃない。/まず言葉をえらぶ。(中略)だが、まちがえてはいけない。/他人の言葉はダシにはつかえない。/いつでも自分の言葉をつかわねばならない。>という「言葉のダシのとりかた」から始まり、「包丁のつかいかた」「おいしい魚の選びかた」「ドーナッツの秘密」「ジャムをつくる」「絶望のスパゲッティ」など、極上の言葉の料理が存分に味わえます。

 <玉葱(たまねぎ)をみじんに切ると、/涙がこぼれた。(中略)老人は、まだ/一どもクリスマス・ディナーを食べたことがない。(中略)夢ってやつは、溜息(ためいき)がでるほど重たいのだ。>という、まるで短編小説のような「サンタクロースのハンバーガー」も好きな一編です。

◆知ってる?「アリスの食革命」

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 <2>アリス・ウォータース『ファニーのフランス滞在記』(坂原幹子訳、京阪神エルマガジン社、2160円)。アメリカ、カリフォルニア州バークレーにある伝説のレストラン「シェ・パニース」のオーナー兼シェフ、アリス・ウォータースを知っていますか? 体と心を健康にするには、その地で取れた新鮮な季節の食材を、シンプルな調理法で食べること。そのアリスの考え方は多くのアメリカ人の食習慣を変えました。これは、子どもの食育にも力を入れているアリスの待望の2冊目の料理絵本です。

 主人公はアリスの娘のファニー。9歳の女の子。フランス旅行で味わった料理が、絵日記風に描かれます。

 マルセイユでは1日がかりでブイヤベースを、ピレネー山脈のふもとの小屋では、山羊(やぎ)のチーズを作ります。ボルドーの海ではとれたての牡蠣(かき)を食べ、パリでは、公園でピクニックをしたり、パリ祭を見物したり。ニース風サラダ、トマトのプロヴァンス風、レモンタルトなど、出てくる料理のレシピつきなのが嬉(うれ)しい。

 「美味しい国のアリス」の世界へ、ぜひあなたもファニーと一緒に旅してください。

◆しっかり食事で人生大丈夫!

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 <3>五十嵐大介『リトル・フォレスト』(講談社、全2巻、各1026円)。東北地方の村にある集落、小森(リトル・フォレスト)。沢と森と田んぼにぐるりと囲まれた一軒家に一人で住み、農業を営む主人公のいち子。作物をつくり、料理をつくり、食べる。そのシンプルな生活をていねいに描いた漫画です。農業の大変さや、失敗も含め、四季や自然と調和した生活が描かれます。

 自分で収穫したお米と山のくるみで作ったくるみご飯。山菜のスパゲティ。薪(まき)ストーブで焼くパン。手作りのジャムやウスターソース。

 澄んだ空気。森の木々のざわめき。新緑や土の香り。虫の声。鳥のさえずり。揺れる稲穂の波。満天の星。蛍。沢の水の冷たさ。五感が刺激され、読むだけで森林浴をした気分になれます。

 そして、自分で料理してしっかり食事をしていれば人生は大丈夫!と、悩んだり迷ったりした時に原点や基本に帰らせてくれる本です。 *毎月第4月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。『作家になりたい!(2)』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

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