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【東京エンタメ堂書店】

宮崎駿監督の絵だから…ジャケ買い!

 本って表紙を見て、つい手に取ってしまうことありませんか。思わぬ有名人が描いているなら、なおさらです。今回は中身というより、装丁が主役の話。新作長編アニメの制作を発表した宮崎駿監督(76)が表紙絵を描いている三冊をご紹介します。 (運動部長・谷野哲郎)

◆ナウシカみたい!?

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 「ジャケ買い」という言葉をご存じですか? CDやDVDをパッケージ(ジャケット)のデザインで買うことを言うのですが、筆者は本でもたまにジャケ買いします。<1>『惑星カレスの魔女』(ジェイムズ・H・シュミッツ著、創元SF文庫、九五〇円)もその一つ。宮崎駿さんのイラストに惹(ひ)かれました。

 主人公たちの宇宙船はまるで「風の谷のナウシカ」に出てくる飛空艇(ひくうてい)のよう。羽のように見える翼は「天空の城ラピュタ」のロボット兵では!? 表紙を見ているだけで想像が膨らみます。

 宇宙に人類が進出した遠い未来。宇宙船の船長パウサートはある日、惑星カレス出身の三姉妹を助けます。不思議な能力を使う彼女らは魔女と呼ばれており、銀河を巻き込む大騒動に巻き込まれることに。おてんばな魔法少女が引き起こす、古き良き時代のスペースオペラです。

◆ロマンス×推理小説

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 読書家としても有名な宮崎さん。<2>『幽霊塔』(江戸川乱歩著、岩波書店、二一六〇円)は子どものころに貸本で読んだ面白さがずっと忘れられなかったという本。

 この作品は元々、英国の作家ウィリアムスンが発表した「灰色の女」をある日本人作家が翻訳し、それをさらに江戸川乱歩が書き直したものです。財宝伝説の残る古びた時計塔、左手を手袋で隠す美女。そして、起きる謎の殺人事件。ロマンスと推理小説の見事な融合といえます。

 宮崎さんはこの作品をヒントに「ルパン三世 カリオストロの城」を作ったのだそうです。読み終わると、ああ、なるほどと思えるはず。「もし、自分がこの映画を作ったなら」と添えてある絵コンテも読み応えがありました。

◆「星の王子さま」作者の傑作

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 最後は、飛行機好きな宮崎さんらしい一冊。<3>『人間の土地』(サン=テグジュペリ著、新潮文庫、五九四円)は、今から九十年近く前、まともな計器も技術もない時代に命懸けで郵便飛行機を飛ばした人々の話。サン=テグジュペリというと、『星の王子さま』を連想しますが、筆者はこの作品が彼の最高傑作だと思っています。

 アルゼンチンの雪山に不時着した僚友のこと、サハラ砂漠に墜落した自身の体験談など。訳者は詩人の堀口大学氏で「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる」と、死と隣り合わせの極限状態が詩のように美しく綴(つづ)られています。「紅の豚」や「風立ちぬ」にさぞ影響を与えたことでしょう。

 それにしても、宮崎さんの書籍好きには驚かされます。引退を撤回して臨む次回作のタイトルが「君たちはどう生きるか」になると明かされましたが、これは児童文学者の吉野源三郎さんの名著から取ったものとか。今からどんな内容になるのか楽しみです。

 人の趣味嗜好(しこう)というのは、意外に変わらないものです。今回はアニメ映画の巨匠を例に紹介しましたが、たまには全く別の視点で本を選んでみるのもいいのでは。読書ライフを豊かにするジャケ買い。ぜひ、お勧めします。

 

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