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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>いじめについて考える

 いじめは減るどころか、むしろ増えている。2016年度に学校で把握されたいじめは32万件(!)で過去最多を更新。深刻な問題とされながら、なぜ、いじめはなくならないのか。1年の終わりに考えてみませんか?

◆障害

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 <1>R・J・パラシオ『ワンダー』(ほるぷ出版・1620円)

 顔に障害があって生まれた10歳の少年オーガストは、生まれて初めて一般の小学校に通うことに。そこで起こる事件が、主人公や家族、友人などの視点で語られていきます。

 とまどい、避けるクラスメートたち。オーガストと仲良くしたことで仲間はずれになるジャック。オーガストを学校から追い出そうとする親たち。偏見、差別、嫌がらせ、そして、理不尽な暴力。

 その一方で、両親が弟にかかりきりで甘えられず、寂しさを抱えながらも、弟を守ろうとする姉のヴィアの健気(けなげ)さには涙がこぼれます。

 また、昼食の食堂で、混んでいるのに誰も座ろうとしないオーガストのテーブルに軽やかに座る女の子、サマーの存在がさわやかで救われます。

◆友達

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 <2>小林深雪・戸森しるこ・吉田桃子・栗沢まり『ひとりぼっちの教室』(講談社 YA!アンソロジー・1026円)

 いじめをテーマにした最新アンソロジー。

 戸森さんの「これは加部慎太郎に送る手紙」。クラスで先生から定期的におこなわれているいじめアンケート。いじめっ子は自己申告しないし、周りも見て見ぬふり。ところが、ある日、いじめをしたという意味の「×」が書かれた。友達の意外な一面を知り成長する主人公が描かれます。

 吉田さんの「転生☆少女」は、いじめを扱いながらもコミカルな作品。「おとなの言うことなんか、中学生の心にはかすりもしないんだよっ! 命を絶つくらいなら、どこかに逃げればいいのに? 正論だよ。でも中学生には今が全て。どうすればいいかわからないんだよ」という言葉にハッとさせられます。

 栗沢さんの「イッチダンケツ」は、気が弱くて勉強のできない風人が主人公。英語の先生に目をつけられバカにされ、そのことでクラスでも孤立してしまう。でも、そんなクラスの中にも味方はいるかもしれない…。一筋の希望を感じさせてくれる作品です。

 そして、わたしも「友達なんかいない」という短編を書いています。クラスの人気者でいじめっ子だった穂花が、今度は急にクラス中から無視される。いじめる側は、自覚も罪悪感もない。そして、教室にはどこにも逃げ場がない。

 教室にいるすべての子どもたちに、今読んでほしい四つの物語が詰まっています。

◆遺書

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 <3>重松清『十字架』(講談社文庫・700円)

 中学2年の時、クラスメートが首を吊(つ)って自殺した。遺書には、4人の名前と「ありがとう」「ゆるさない」「ごめんなさい」が書かれていた。

 「ゆるさない」と書かれたいじめの加害者ではなく、「ありがとう」と書かれたいじめの傍観者であった少年が主人公です。そして、「ごめんなさい」と謝られた少女と子どもを自殺で亡くした両親。それぞれが重い十字架を背負いながら過ごした、その後の20年の歳月が描かれていきます。

 いじめは当事者だけでなくその周囲の人たちを巻き込んでしまう。その取り返しのつかない哀(かな)しみに胸が痛みます。

 いじめが原因の自殺が後を絶ちません。もし、自分が主人公だったら? クラスメートだったら? その家族だったら? そう自分自身に問いかけながら読んで、考えてほしい3冊です。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。おしごと絵本『ゆめはまんが家!』絵・今日マチ子(講談社)発売中。

 

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