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【東京エンタメ堂書店】

こんな世界があったなんて… PTA

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 こんな世界があったなんて。昨年四月に初めて子どもの小学校のPTA役員を引き受けたところ、聞いていた以上の忙しさと、そこで交わされる会話の昼ドラ並みの激しさに、開始二週間でノックアウトされました。あなたもPTAの世界をのぞいてみませんか。(生活部・今川綾音)

 うっかり引き受けてしまった役員。正直、ルポ記事にでもしなければやっていられないと思うほどの物理的・精神的負担です。ただ、自分の体験を記事にするのはまだ早いと感じます。あまりにも生々しすぎるからです。

 PTAは、それぞれの学校にある、P(ペアレント=保護者)とT(ティーチャー=教職員)の組織。小学校のPTA会長を3年間務めた体験を『ある日うっかりPTA』(KADOKAWA、1404円)に赤裸々につづった書評家の杉江松恋(まつこい)さんも、出版まで6年間の冷却期間を置いています。「エピソードもせりふもほぼ実話。もめている時の話もそのまま書いてしまったので、人間関係を考えるとこのタイミングでよかった」と振り返っています。

 この本で書いているのは、突然の電話で会長就任を打診され、「その金髪、黒く染めていただけませんか?」と言われて一度は断りながらも「うっかり」引き受けてしまった経緯。「息切れしないPTA」を目指して着手した、一部業務のシルバー人材センターへの委託や、会長3年目に起きた役員同士の感情の衝突とその対応。よくもまあ、ここまで包み隠さず…と心配になりましたが、登場人物は仮名と知り、ほっとしました。

 加納朋子著『七人の敵がいる』(集英社文庫、670円)は、フルタイムで働く女性が主人公の小説です。子の小学校入学をきっかけにPTAや子供会への参加を求められ、周囲と衝突しながら突き進む6年を描きます。主人公の陽子は「役員なんて専業主婦でなければ無理では?」と保護者会で言い放ち、多くの親を敵に回してしまいます。

 兼業主婦と専業主婦。両者を色分けする無意味さも含め、この小説は母親の抱えるもやもやを刺激します。少し過激だけれど、陽子が発する言葉にスッとする人も多いのではないでしょうか。ラスボス(最後のボス)ともいえる女性PTA会長との対決シーン、それに続く後日談もさわやかな後味です。

 体験談でイロハを学び、小説でスッキリした後には現実が待っています。大塚玲子著『PTAがやっぱりコワい人のための本』(太郎次郎社エディタス、1620円)には、保護者の対立の泥沼化を避ける方法や活動の断捨離術など、具体的なノウハウが紹介されています。

 専業主婦を主な担い手としていた頃の活動は時代遅れだと、改革の動きも出ています。毎日新聞の記者でもある山本浩資(こうすけ)さんが、完全なボランティア制に小学校PTAを生まれ変わらせた『PTA、やらなきゃダメですか?』(小学館新書、821円)には、変えていくためのヒントが詰まっています。

 ヘルシンキ大非常勤教授・岩竹美加子さんは、また別の角度からPTAの在り方に疑問を呈しています。著書『PTAという国家装置』(青弓社、2160円)では、PTAの成り立ちについて、これまで語られてこなかった戦前の「大日本連合婦人会」や「母の会」とのつながりを指摘。「子を臣民として錬成するために母の奉仕と修養を求めた天皇制国家の制度を、なぜ今も続ける必要があるのか」と問い掛けます。

 

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