東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 東京エンタメ堂書店 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【東京エンタメ堂書店】

韓流ドラマ、K−POP 次はK−文学

 韓国文学の日本語翻訳出版が増えています。純文学からミステリーまでジャンルもさまざま。映画、ドラマ、K−POPに次いで、「K−文学」として注目されています。最近読んで面白かった作品を紹介します。(放送芸能部・砂上麻子)

◆70年代ソウル 虐げられた人々

写真

 <1>チョ・セヒ著、斎藤真理子訳『こびとが打ち上げた小さなボール』(河出書房新社、2052円)は、1978年の出版から40年たった今でも韓国で読み継がれているロングセラー小説です。映画化もされました。

 舞台は、70年代の軍事独裁政権下のソウル。急速な都市開発や経済発展で虐げられる人々の姿を描いた12編の物語を収録しています。

 表題作では、貧民街で暮らす一家が都市開発により立ち退きを迫られます。「こびと」とは一家の小さな父の呼び名。強制執行で家は壊され、こびとは悲劇的な最期を迎えます。表題作以外も劣悪な環境の工場労働や資本家の搾取、障害者差別など社会のゆがみを鋭く描き出しています。

 韓国で数年前、原書を購入した時、書店の店員にロングセラーの理由を尋ねたところ、「社会が当時と変わっていないから」と冗談とも本音ともとれない答えが返ってきて印象に残っています。

◆何が真実で何が嘘 分からなく

写真
写真

 <2>キム・ヨンハ著、吉川凪訳『殺人者の記憶法』(クオン、2376円)。田舎の獣医キム・ビョンスは、冷徹な殺人犯という裏の顔を持つ。老年になり引退して平穏な日々を送る彼には、認知症の兆候が表れ始めています。そんな時、偶然出会った男を連続殺人犯だと直感し、次の狙いが愛娘(まなむすめ)のウニだと確信したビョンスは、消えゆく記憶力と格闘しながら人生最後の殺人を計画しますが…。

 韓国を代表する人気作家のベストセラー小説です。最初はミステリーかと思って読み進めたのですが、途中から、主人公の記憶の迷宮をさまようような不思議な感覚にとらわれました。何が真実で何が嘘(うそ)なのか分からなくなるところが、この作品の魅力でしょうか。

 この作品を原作にした映画「殺人者の記憶法」=写真=も、現在公開中です。原作とはラストが違うので、小説と映画を比べてみるのも面白いです。

◆孤独な2人の物語 詩のように

写真

 <3>ハン・ガン著、斎藤真理子訳『ギリシャ語の時間』(晶文社、1944円)。2016年、『菜食主義者』(クオン)で英国のブッカー国際賞を韓国人で初めて受賞した女性作家の長編小説です。

 ある日言葉を発することができなくなった女は、失われた言葉を取り戻すため古代ギリシャ語を習い始めます。一方、ギリシャ語講師の男は少しずつ視力を失いつつあります。女は離婚して、子どもと引き離され、男は思春期に移住したドイツから帰国しソウルで孤独に暮らしています。互いに孤独と喪失を抱えた2人が出会い、新たな物語が生まれます。詩のように研ぎ澄まされた精緻で美しい文章に引き込まれます。

 『ギリシャ語の時間』は昨年10月から始まった、韓国の新世代の作家を紹介する「韓国文学のオクリモノ」シリーズの第1回配本です。『ギリシャ語−』以外にすでに3作品が出版されており、担当編集者の斉藤典貴さんは「韓国の新しい時代を感じさせる作家を日本に紹介したい」と意欲を見せています。

 

この記事を印刷する

PR情報