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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>文芸・哲学・美術 新しい世界の扉を

 文芸、哲学、美術。新しい学年、新しい扉を開けてみませんか? 本の扉の数だけ、そこには新しい世界があります。難しそう? そんなことはありません。タイトルに「よちよち」「プチ」「かわいい」がついているから大丈夫!

◆中也の写真 補正済み!?

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 <1>久世番子(ばんこ)『よちよち文藝(ぶんげい)部』(文芸春秋、一〇二六円)

 太宰治、夏目漱石、谷崎潤一郎、三島由紀夫に川端康成等々。国語の教科書に載っていたから、名前と作品は、なんとなく知っている。でも、ちゃんと一冊は読んだことないな…というあなたにこそ読んでほしい爆笑コミックエッセイです。今まであなたが持っていた文豪と名作に対するイメージが変わりますよ。

 太宰の桜桃忌(おうとうき)に潜入してフィーバー? 漱石の『坊っちゃん』の主人公がブログを書いていたら大炎上? 中原中也の有名なポートレート、あの黒目がちな目は補正されていた!? カエルを岩屋から出さないようにする井伏鱒二『山椒魚(さんしょううお)』ゲームで遊んでみよう! 石川啄木がブラックなコピーライターだったら? 梶井基次郎は『檸檬(れもん)』よりバナナが似合う顔だった!?

 読み終えた時には、日本文学がぐっと身近(いや、台無し?)になって、きっと本が読みたくなりますよ。

◆金塊の「価値」って?

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 <2>佐藤雅彦『プチ哲学』(中公文庫、七〇〇円)

 「哲学」というと何やら小難しいものに思えますが、哲学(philosophy)とはそもそも、智(ち)(sophy)を愛する(philo)からきています。智を愛するとは、ざっくばらんに言えば、「いろいろ思ったり、考えてみることは面白い」ということなのです。

 そう佐藤さんが書いているように、日常生活でのちょっとした考えの発見がイラストと一緒につづられていきます。

 例えば、「価値のはかり方」について。一キロの金塊はお金に換算すれば莫大(ばくだい)な額になるが、漬物石としては一キロの価値しかない。ものには、いろんな物差しがある。そして、大事なのは、どの物差しをあなたが選ぶかということ。

 これは、物だけでなく人や出来事にも応用できる、とても役立つ考え方だと思います。

 また、「外からつくる、内からつくる」について。人間は、形だけの笑顔をつくるために「チーズ!」と言って写真を撮るが、ネズミたちは心からにっこりするために大好きなチーズを思い浮かべながら、「チーズ!」と言う。さあ、どちらが、いい笑顔?

 こんなふうに、少しだけ深く考えてみると、その裏に、いろんな興味深いことが見えてくる。そんな発想のヒントを、易しく教えてくれる本です。

◆モフかわ 日本画

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 <3>金子信久『江戸かわいい動物』(講談社、二四八四円)

 日本画と聞くと、豪華絢爛(けんらん)な屏風(びょうぶ)などを思い浮かべる人も多いでしょうし、十代にはあまり馴染(なじ)みがない世界かもしれません。でも、平安時代に描かれたという「鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)」は知っていますよね? あの漫画の原点のような愉快なウサギやカエルなどの動物たち。

 その「鳥獣戯画」の遺伝子を受け継いだような、可愛(かわい)い動物たちの日本画を集めたビジュアルブックです。

 近年ブームの伊藤若冲(じゃくちゅう)、その百犬図をはじめ、歌川国芳の猫や、円山応挙の犬や虎(カバーの絵)など、どれもモフモフしていて本当に可愛い。そんな「モフかわ」に満ちた世界に、いつまでも浸っていたくなります。巻末には所蔵美術館のリストもあるので、気に入った絵があったら、ぜひ本物も見に行ってください。

 人生には自動ドアはなく、自分で開けないと扉は開きません。さあ、新しい世界の扉を開けてみませんか?

 <こばやし・みゆき> 児童文学作家。『作家になりたい!(3)』(講談社青い鳥文庫)3月10日ごろ発売。

 

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