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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>悩んだ時は犬の物語

 今年は戌(いぬ)年。12年に一度の犬が主役の年です。犬はわたしたちに身をもって、たくさんのことを教えてくれます。生きること、愛すること、そして、死ぬこと。そう、悩んだら犬に学べ! 今回は3匹の犬の本をご紹介します。

◆可愛い「人生の師」

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 <1>チャールズ・M・シュルツ『スヌーピーコミックセレクション60’s』(角川文庫、五六二円)

 キャラクターは知っていても、漫画を読んだことのない人も多いのでは? これは時代ごとに厳選したよりぬきコミックです。漫画は可愛(かわい)いだけでなくシニカルで哲学的。

 心優しいけれど失敗ばかりのチャーリー・ブラウン。毒舌家で誰に対しても手厳しいルーシー。愛用の毛布を手放せないライナス。ベートーベンを愛してやまない芸術家のシュローダーなど、個性的なキャラクターたちが登場します。そして、自分を犬だと思っていないビーグル犬のスヌーピーは、人生の先生のよう。

 ライナスの大切な毛布を、ルーシーが「ボロ毛布!」と埋めてしまった時も、スヌーピーが掘り起こしてくれるし、その意地悪なルーシーだって、スヌーピーを抱きしめれば、ついこう叫んでしまいます。

 「幸せはあたたかい子犬!」

 翻訳は詩人の谷川俊太郎さん。英語と日本語の両方が載っているので、英会話の参考にも。また、90年代編では、五十年続いた漫画の最終回が読めて、グッときますよ。

◆「小犬あるある」満載

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 <2>カレル・チャペック『ダーシェンカ 愛蔵版』(青土社、一五一二円)

 二十世紀初頭の中欧チェコで活躍したチャペック兄弟。兄のヨゼフは主に絵画や挿絵を、弟のカレルは主に文筆家として、二人で多くの子ども向けの作品を残しています。

 わたしも小学生の時にカレル作・ヨゼフ挿絵の「長い長いお医者さんの話」に夢中になりました。大人になった今は、「園芸家12カ月」が愛読書。二人には犬と猫を描いた作品も多数あり、どの本もユーモラスであたたかく、読むとホッと安心できますよ。

 この本は、カレルの愛犬が生んだ小犬、ダーシェンカの成長アルバムです。手のひらに乗るくらい小さかったダーシェンカが歩き出し、大切な花壇を壊したり、お客さまの靴をかじったりと、いたずらに翻弄(ほんろう)される日々。それが、小犬に語りかけるような文章でつづられていきます。可愛い挿絵と写真もたくさん。

 また、ダーシェンカのためのおとぎ話も収録されていて、その溺愛ぶりは、犬を飼ったことのある人なら(わたしもです!)必ずわかる「あるある」でいっぱいです。

◆そっと一人で読んで

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 <3>ガブリエル・バンサン『アンジュール ある犬の物語』(BL出版、一四〇四円)

 アンジュールはフランス語で、「ある一日」という意味。犬の一日を描いた絵本です。

 ある日、一匹の犬が車の窓から投げ捨てられる。そんなショッキングなシーンから物語は始まります。そして、犬は車を、飼い主を、どこまでもどこまでも追いかけます。

 文字も色もないシンプルな絵本です。白の余白を生かし、濃い鉛筆でザザッと力強い筆跡で描いたデッサン。ページをめくるとだんだん風の音や犬の息遣いが聞こえてきます。

 そして、読んでいくうちに、自分が犬の視線になっていることに気がつきます。どんどん不安で悲しくなってきます。でも、そのさすらいの果てに待っていたものは…。

 まるで短編映画を観(み)ているかのような世界を、ぜひ味わってほしいです。一人で読むのはもったいない。でも、一人だけでそっと読みたい。そんな絵本です。

 <こばやし・みゆき> 児童文学作家。『これが恋かな?(1)』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

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