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【東京エンタメ堂書店】

いくつになっても 夏に読みたい絵本

 絵本は一生の友だち。いくつになっても、どんなときでも楽しめますが、夏にこそ読みたい絵本があります。文化部の矢島智子が紹介します。

◆劇的変化

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 ながーい夏休みは人を劇的に変える可能性を秘めています。<1>P・フライシュマン作、K・ホークス絵、千葉茂樹訳『ウエズレーの国』(あすなろ書房、1512円)の主人公ウエズレーは、学校でも仲間外れにされているちょっと変わった少年。でも探求心は旺盛で、庭を舞台に驚くべき夏休みの自由研究を始めます。種から育てた植物はやがて実を結び…。

 文明とはこうして始まるのか、と追体験するような展開。新学期にはウエズレーも変化を遂げているのです。

◆出会い

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 長い休みは学校の外でも活動や出会いの場ができるとき。<2>いせひでこ作『大きな木のような人』(講談社、1728円)はフランスの大きな植物園が舞台です。パリに暮らす日本人の少女さえらは画板を抱えて通ううち、植物学者の先生と知り合います。さまざまな樹木の知識を吸収しつつ、やがて帰国するさえら。ですが、彼女はそこに小さな“種”を残していました−。この夏、あなたはどこで、どんな人と出会うのでしょう。

◆栄養剤

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 海へ、山へ。大人だって夏は仕事を休んで出掛けたいはず。でも、通勤と逆方向の電車に乗るチャンスのない人にはこの一冊を。<3>スズキコージ作、かたやまけん絵『やまのかいしゃ』(福音館書店、1620円)は長く品切れになっていましたが、5月に新たな出版社から再版されました。

 主人公のほげたさんは朝寝坊。昼すぎに出勤しようと電車に乗ると、車窓の眺めは見慣れない緑の森に。やがて終点の山奥の駅に到着します。開き直ったほげたさんは「きょうは、やまのかいしゃへいこう」と山頂を目指します。

 ナンセンス絵本の代表作家スズキコージさんが繰り出す物語は、あり得ないことの連続。でも日常に疲れた頭には、振り切れた世界が快感です。見開きページにパノラマのように広がる、かたやまけんさんの絵はユーモラスでみっしりとカラフル。栄養ドリンクより元気が出ます。

◆言葉遊び

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 夏ばてで出掛ける意欲もない、という人には<4>たけがみたえ作『マンボウひまな日』(絵本館、1404円)がお薦めです。どこかで聞いた語感の書名だなあ…と思ったら「貧乏暇なし」の駄じゃれでした。本作はMokuhanger(木版画作家)たけがみたえさんの言葉遊びの絵本。「にげるなカニ!(逃げるが勝ち)」「蚊も泣くフカも泣く」など数々の言葉の変化球が、夏色いっぱいの木版画面に躍り、嫌でも笑みがこぼれます。

◆生と死

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 夏は星空に親しむ絶好の季節。街明かりから遠い空気の澄んだ場所では天の川が見られます。天の川をモチーフにした有名な童話を絵本にしたのが<5>宮沢賢治作、田原田鶴子(たはらたづこ)絵『銀河鉄道の夜』(偕成社、1944円)。文章を生かすように絵の挿入は抑えめで、用語解説も付いています。

 亡き人の魂が還(かえ)る夏は、生と死に思いを巡らす季節でもあります。そんな世界を走る銀河鉄道に乗って、主人公たちと「ほんとうのさいわいは一体何だろう」と考えてみるのもいいかもしれません。

 

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