東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 東京エンタメ堂書店 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>進路に悩んだ時に

 行きたいと考えている学校は、自分が本当に行きたいところ? 自分が就きたいと考えている仕事には、いつか本当に就けるの? 夏期講習に通う受験生も多い夏休み。進路に悩んだら、こんな本を読んでみよう。

◆選択肢を広げる

写真

 <1>吉田篤弘『つむじ風食堂と僕』(ちくまプリマー新書、七三四円)

 主人公の少年、リツくんは十二歳。お父さんはサンドイッチ屋さんを営んでいる。継ぐの?と言われるけれど、でも、将来の仕事は、ちゃんと自分で考えて決めたい。そこで、いつも通っている食堂に来ている大人たちに「どんな仕事をしていますか?」と聞いてみることに。

 文房具屋さん、魚屋さん、新聞記者、ダンサー、イラストレーター、宅配便の配達員、コンビニの店員さん等々。みんなが、自分はどんな仕事をしていて、どんなところが面白いのかを話してくれる。そして、リツくんは思う。

 <僕は今まで一度も自分が豆腐屋さんになるなんて想像したことがなかった。はじめて気がついた。僕は豆腐屋さんにもなれる。何にだってなれる。食堂のマスターにもなれるし、路面電車の運転士にもなれる>

 そう。世の中には、あなたの知らない仕事が、まだたくさんある。知っている仕事でも、その面白さがまだわかっていないだけかもしれない。

 読み終わった時、視野と仕事の選択肢がグッと広がっているはずです。

◆受験のその先も

写真

 <2>白尾悠『いまは、空しか見えない』(新潮社、一五一二円)

 R−18文学賞大賞・読者賞ダブル受賞作。R−18とは十八歳未満禁止という意味ですが、この小説は進路や親が厳しすぎると悩んでいる高校生に、ぜひ読んでほしい。

 智佳は山梨の県立高校に通う真面目な優等生。成績は学年女子でトップ。そして、実は親にも友人にも隠しているが、ホラー映画が大好き。

 親の望む自宅から通える地元の国立大学を受験するか? それとも、自分の本当に行きたい東京の私立大学芸術学部で映像を学ぶか?

 家族を支配する暴力的な父親に内緒で、ある秋の日、東京へ、たった一日の冒険の旅に出かけると、そこで……。

 高校三年生は迷う季節。あこがれと現実との距離を感じて、自分には無理だと諦めそうになったり、親や周りの意見に流されそうになったり。

 でも、目標の大学合格というゴールの先も人生は続いていきます。むしろ、その先の方が、人生はずっと長い。ゴールは常にスタートです。

 大学生になった智佳のその後を描いた続編も収録。進路を考えるヒントをくれるはず。

◆ピンチはチャンス

写真

 <3>河合隼雄『こころの処方箋』(新潮文庫、五二九円)

 臨床心理学者の故・河合隼雄さんが、生き抜く知恵を伝授してくれる一冊。

 「100%正しい忠告はまず役に立たない」「マジメも休み休み言え」「ものごとは努力によって解決しない」「文句を言っているうちが華である」「心配も苦しみも楽しみのうち」など五十五項目。常識を疑う、違う角度で見ることで、別の真実が見えてきます。

 中でも、わたしが好きなのは、「ピンチ即チャンス」という言葉。例えば、家族の間で問題が起きる。でも、その最悪な時は、実は親子が真に深く対話する絶好の機会である。落ち込んだり嘆く前に、チャンスにしてしまえ!

 この言葉で、最悪な時も気持ちを切り替えられるようになりました。ちょっとした考え方ひとつで、心はコントロールできます。悩んだ時、ページをめくってみてください。

  *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。『これが恋かな?(1)』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

この記事を印刷する

PR情報