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【東京エンタメ堂書店】

笑いあり涙あり 進化した「ホラー」

 連日、暑い日が続きますね。寝苦しい夜は、読書で暑さを忘れてみてはいかがですか。幽霊や死神(しにがみ)、ホラーなどを題材にした真夏の夜に似合う3冊を紹介します。 (運動部長・谷野哲郎)

◆ゾロゾロと

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 最初に紹介するのは、これまでにない形のミステリー。今村昌弘著の<1>『屍人(しじん)荘の殺人』(東京創元社、1836円)です。昨年10月の発売と同時に業界が騒然となり、優れた推理小説に贈られる「鮎川哲也賞」や「このミステリーがすごい! 2018年版」など数々のタイトルを獲得して注目を集めました。

 神紅大・ミステリ愛好会の葉村譲は映画研究会の夏合宿に参加。宿泊した「紫湛(しじん)荘」で連続殺人事件に遭遇します。謎の美女探偵・剣崎比留子とともに犯人捜しに取り掛かるのですが、殺人現場の状況がすごい! ネタバレになるので書けないですが、夏の夜の定番となった●●●がゾロゾロ出てきます。殺人事件×●●●。背筋も凍る掛け合わせをお楽しみください。

◆成仏させて

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 藤まる著の<2>『時給三〇〇円の死神』(双葉文庫、690円)は、同級生の花森雪希(ゆき)に勧誘され、時給300円で死神のバイトを引き受けた男子高校生・佐倉真司の物語。特に中高校生に推薦したいライトノベルです。

 現世に残る死者の未練を晴らし、成仏させるのが死神の役目。不運な出来事から投げやりな人生を送っていた真司は、わずかなバイト代と「半年間務めれば、どんな願いも叶(かな)えてくれる権利を得られる」という約束につられて死神を引き受けるのですが、死者に出会うたび、何かが心の中で変わっていきます。

 中盤以降に目黒女児虐待死事件を連想させる話があり、胸が痛みます。親子や男女の愛情がテーマで『君の膵臓(すいぞう)をたべたい』が好きな人にはきっと気に入ってもらえるはず。真司が下した最後の選択は自分もそうありたいと願いました。

◆自殺から救え

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 高野和明著の<3>『幽霊人命救助隊』(文春文庫、918円)は2004年出版のロングセラー。『13階段』や『ジェノサイド』が有名な高野さんですが、筆者はこれが一番のお気に入り。命を考えるという点で夏休みの読書感想文にも最適でしょう。

 浪人生の高岡裕一は不思議な空間で、神と名乗る存在と出会います。そこで知らされたのは、自分が自殺して幽霊になっていること。天国に行くには地上に戻り、自殺志願者を100人救うことでした。

 裕一はやくざの老親分、物憂げな女性ら仲間の幽霊と力を合わせ、あの手この手で思い詰めた人を死から救っていきます。深刻なテーマをコミカルに書けるのが高野さんの筆力。「今日の苦しみが明日も続くとは限らない」「あなたが死んだら、悲しむ人がいる」。何かに長い間、苦しんでいる人のために。そんな思いが込められた一冊です。

 最近のホラーは、恐怖に笑いや涙といったエッセンスを加える傾向があり、どんどん進化しています。映画やドラマの世界も同じで、新感覚ゾンビ映画の『カメラを止めるな!』は本紙編集局でも(一部で)話題沸騰中。怖くて、笑って、最後は泣けると自信をもってお勧めします。

 他にも『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』も見て損はさせません。この夏、書籍も映像も、ちょっと怖くて不思議なもので涼をとってみてはいかがでしょうか。

 

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