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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>9月1日 下を向いたままでいい

 もうすぐ、平成最後の夏休みが終わります。子どもの自殺が1年でいちばん多い日は9月1日。寂寥(せきりょう)感のある晩夏に考えたい、孤独をテーマにした本3冊です。つらくて顔を上げられない時は、下を向いたままでいい。さあ、そのまま読書しましょう!

◆考えすぎず大丈夫

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 <1>トーン・テレヘン著『ハリネズミの願い』(新潮社、一四〇四円)

 臆病で気難しいハリネズミは、いつもひとりぼっち。このままではいけないと誰かを家に招待することを考えます。

 ところが、誰かが家に来た時のことを想像すると悪いことしか思い浮かびません。

 出したケーキを誰かがおいしくないと言って怒りだしたら? ダンスした誰かが誤って、ハリネズミのハリを踏んで怪我(けが)をしたら? 入ってほしくない部屋に誰かが入って秘密を知られたら?

 いやだ。絶対にいやだ。誰も招待しない。それがなにより賢明だ。でも、そう決めたその先に待っていたものは?

 現実が想像を軽やかに超えていくラストで、救われた気持ちになれます。

 考えすぎなくても大丈夫。人生はいいことばっかりでもないけれど、悪いことばかりでもないんです。一七年の本屋大賞・翻訳小説部門一位の本。

◆誰でも孤独な存在

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 <2>ジョーン・G・ロビンソン著『思い出のマーニー 上・下』(岩波少年文庫、各六九一円)

 スタジオジブリがアニメ化した映画でも感動しましたが、ぜひ原作も読んでほしい。

 アンナは、学校で、いつもひとりぼっち。みんなの輪の外側にいて、中に入れない。

 それを心配した養母のはからいで、夏休みを風車小屋のある海辺の町で過ごすことに。

 そこでアンナは謎めいた古いお屋敷に住むマーニーという少女と友達になります。

 アンナは自分が嫌いで、自分は誰からも好かれないと思っていますが、マーニーにだけは心を許します。でも、ある日マーニーは消えてしまう。初めて本当の友達ができたと思ったのに!

 すべての謎が解けるラストは愛に満ちています。楽しげな魔法の輪の中に入れない。その疎外感は、子どもの自分だけではなく、大人でも同じように感じるのだとアンナはマーニーを通じて知る。

 そう、人は誰でも孤独な存在なのだと気がつくのです。

 「このお天気に、外にいたの?」と聞かれたアンナが、「でも、あたし、今はもう、中にいるわ!」と高らかに答えた瞬間、胸が熱くなります。

◆一人を楽しめると

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 <3>谷川俊太郎選『茨木のり子詩集』(岩波文庫、七五六円)

 中高生から、「なんでもわかってくれる親友や彼がほしい」という相談をよく受けます。わたしは、いつも「まず親友も彼もいらないと思ってみたら?」と答えます。なぜなら、みんな自分を生きることに必死。他人から過剰に期待や依存されるのは重荷です。

 でも、もし一人でも楽しそうに生きていたら、あなたと仲良くなりたいと向こうから近づいてくるはず。そんなあなたに、茨木のり子さんの「一人は賑(にぎ)やか」という詩を。

<一人でいるのは 賑やかだ/賑やかな賑やかな森だよ/夢がぱちぱち はぜてくる/よからぬ思いも 湧いてくる/エーデルワイスも 毒の茸(きのこ)も(中略)/一人でいるのは賑やかだ/誓って負け惜しみなんかじゃない/一人でいるとき淋(さび)しいやつが/二人寄ったら なお淋しい/おおぜい寄ったなら/だ だ だ だ だっと/堕落だな/恋人よ/まだどこにいるのかもわからない 君/一人でいるとき/一番賑やかなヤツであってくれ>

 人との関係は、互いに自立して初めて培うことができる。そう教えてくれる詩です。

 *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。『七つのおまじない』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

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