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【東京エンタメ堂書店】

懐かしのマンガ体験

 かつて大人がマンガを読むことは驚きを誘うものだったかもしれない。しかし、いまやそれは当たり前の風景だ。少なくとも日本ではそうである。今回は、そんな大人のマンガ読者に向けた懐かしのマンガ体験に訴えかける作品を紹介したい。

◆「自分」が登場人物に

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 一つ目は漫画・錦(にしき)ソクラ『今日からCITY HUNTER』(ノース・スターズ・ピクチャーズ、第(1)巻626円)だ。「参考書」としてクレジットされた北条司『シティーハンター』のスピンオフ(派生)作品だが、変わっているのは現代を生きる『シティー−』ファンの女性主人公が、タイムスリップというべきか生まれ変わりというべきか、10代の少女としてその物語の世界に入り込んでしまうところだ。

 読者自身が新キャラクターとして登場する人気エピソードの語り直しには、ユーモアとともに不思議な緊張感も漂う。北条の絵を見事に模倣した錦の作画も見事で、思わず両方を手に取って、見比べ、読み比べたくなる。

◆どっぷり濃い〜世界

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 原作・宮川サトシ、作画・近藤和寿の『僕(やつがれ)!!男塾』(日本文芸社、第(1)巻620円)も、原案は往年の人気マンガ『魁(さきがけ)!!男塾』などの宮下あきら。荒唐無稽で荒々しい「男塾」の世界に漫画家ミヤガワが迷い込んでしまうというスピンオフ作品だ。

 描き込みの少ないシンプルな絵柄のミヤガワの姿がその世界に飛び込んだ途端にがらりと濃密なものに変わってしまうギャップの大きさなども含め、原作マンガの持つバカバカしいまでの過剰さをいろいろな角度から楽しめる一作。

◆ネットもないあの頃

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 前述の2作は懐かしの世界に入り込む物語だが、主人公がそんなマンガを読んでいた頃の自分へと舞い戻るのが、佐々木陽子『タイムスリップオタガール』(フレックスコミックス・第(1)〜(3)巻各648円)だ。

 主人公は現在の記憶を持ったまま中学生時代の自分へと戻ってしまったオタク女性。インターネットも一般的でなかった時代のオタク少女の在り方を主人公と共に懐かしく追体験できる。

 マンガやアニメを好きな少年少女が抱きがちなコンプレックスや人間関係でのつまずきを主人公が大人の感覚で切り抜けていく姿の何げなさも、若い頃に戻って人生をやり直すタイプの物語としては新鮮だ。

 (岩下朋世(ほうせい)=マンガ研究者)

 

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