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【書く人】

大人になった未来描く 『星に願いを、そして手を。』作家・青羽悠(ゆう)さん(16)

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 漠然とした夢を抱えていたという。「『何かになりたい』という思いが僕の中にずっとあった。その思いを形にしたかった。パソコンさえあれば、紙とペンさえあれば始められるのが小説だった」。高校一年だった一昨年四月から一年間、毎夜、日付をまたぐ一時間ほどを執筆に充てた。「毎日一行でも書けば完成するだろう」。家族や友人にも内緒で、一人書き通した。

 物語の主人公は幼なじみの男女四人。宇宙にあこがれ、科学館のプラネタリウムに併設された図書館で青春時代を共に過ごすが、高校卒業後は疎遠に。しかし、慕っていた館長の死がきっかけで、六年ぶりに再会する。大人になった四人の思いが交差する中、科学館の閉鎖も迫って−。

 夢を叶(かな)えた人、叶えられなかった人、迷っている人の三つの視点を四人に持たせた。自分より年上の世代の心情を書くことに「説得力がないだろうし、おこがましいだろう」とも考えたが、自身が進む道を求めて悩み、そして夢見るただ中にいるからこそ、未来に待ち受ける可能性をみな書いてみようと思い切った。

 「願いが叶わなくても、どこかで折り合いをつけないといけない。それは誰しもに起こり得る、普遍的なこと」。作者としては、四人いずれの生き方も肯定している。「この小説を読んで、前を向ける気持ちになってくれたらうれしい」

 自分が実際に利用する図書館など身近な施設をイメージして書いたこの物語で昨年、小説すばる新人賞を史上最年少の十六歳で受賞した。高校でのあだ名は「先生」になった。

 「今もちょっとふわふわしてるっていうか。不思議。『めっちゃうれしい』じゃなくて、ぼんやり眺めている感じ」。それでも、選考委員の辛口の選評に気を引き締める。単行本の刊行に向けて長い文章を削り、視点を整理した。

 小説は中学から読み始めた。伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』や、朝井リョウさんの『何者』などに「文字だけでとんでもないものができている」と圧倒された。高校ではジャグリング部に所属し、近く引退。四月からは受験生だ。「勉強第一。小説だけに夢を絞るのはまだ早い。でも、この先も書いていきたい」

 本名や学校名は非公開。筆名の「青羽」に「青さは未熟さを含め、僕を表す」との思いをこめている。愛知県在住。集英社・一七二八円。 (谷知佳)

 

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