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【書く人】

家族の形いろいろ 『弟の夫』 漫画家・田亀源五郎さん(53)

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 ゲイ向けの専門誌に三十年以上にわたって漫画や小説を発表してきた。同性愛者の男性を同居人に迎えた家族の日常を、ほのぼのとしたタッチで描いた本作で一般誌デビュー。七月には単行本全四巻が完結した。「予定どおり終われてすごく良かったと思う半面、主人公たち三人を書くのがすごく楽しかったので、ちょっとしんみりしました」と連載終了後の心境を話す。

 物語は主人公の弥一(やいち)と娘の夏菜(かな)の家に、カナダ人のマイクが訪れる場面で始まる。マイクは弥一の亡き弟涼二(りょうじ)の結婚相手。ヘテロ(異性愛者)の弥一や夏菜の視点を通して、同性愛者が身近な存在となったときの価値観の揺らぎを描く。

 連載前の打ち合わせではアクション物や時代劇にする案も出たが、行き詰まった。「自分は今までエロチックっていう文脈を外さずにやってきた。その武器を使わずにどうやって自分をアピールできるのか分からなくて」と振り返る。「ヘテロ向けのゲイコミック」というアイデアは田亀さんの提案だった。「個人の内面や恋愛の話にとどまらず、ゲイと社会の関係を書けたら新しいかなと」

 田亀さんの実体験も内容に反映されている。夏菜が「マイクとリョージさん どっちが旦那さんでどっちが奥さんだったの?」と聞く場面。マイクは「どっちもハズバンド(夫)」とほほえむ。「私は二十年以上パートナーと一緒に暮らしています。友人とかに『うちの旦那がね』と言うと『あなたが奥さんなの?』ってよく返される。この人たち、何でも男女関係に置き換えちゃうのねって」

 作中では男二人の同性婚にとどまらない多様な家族の在り方を描いてみせた。バツイチの弥一は別れた妻と絆を保ち、二人で夏菜を見守り続けている。「同性婚を扱ったからって結婚バンザイって感じにはしたくなかった。現在の婚姻制度に全く疑問がないかというと、そうでもないですし」

 世間ではここ数年でLGBTへの注目が高まった。「仮に一過性のブームだとしても、その中で次につなげられる何かが残ればそれでいいと思う。生まれてくる子どもたちはもっと楽になるんじゃないかなと」

 作品は「お子さんのいる方だったり、家族一緒に読んでほしい」と望む。「これを読んだ人なら、わが子が仮にゲイやレズビアンだったとき、ちゃんと間違わないで向き合ってくれるんじゃないかな」

 双葉社・各六七〇円。

 (小佐野慧太)

 

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