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【書く人】

自虐的?実は自信満々『日本の異界 名古屋』 作家・清水義範さん(69)

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 名古屋人の風変わりな生態を、ピリ辛のユーモアたっぷりに考察した短編小説集『蕎麦(そば)ときしめん』。その発表から三十余年、ノンフィクションであらためて古里と向き合った。「繁華街などを再取材したところ、あまり昔と変わっていなかった。独特のベタベタな人間関係が苦手。でも、距離を置いて見れば非常に面白い街です」と語る。

 本書では、木曽三川が東西からの人の流れをさえぎり、名古屋がガラパゴス化したと分析。反骨心あふれる尾張藩の七代藩主徳川宗春の盛衰が、今に至る気風を生んだとみる。不用品のリサイクルや商売に役立つ「ツレ」のコネクション、大相撲名古屋場所の閉幕後に土俵の俵を持ち帰る人びと、応接間のように使われる喫茶店…。披露される数々のエピソードは、よそ者には衝撃的だ。

 名古屋市で生まれ、愛知教育大を卒業。「作家になるチャンスが多いはずだ」と二十三歳で上京し、半村良さん(故人)に弟子入りした。十年ほどサラリーマンをしながら投稿生活を続け、さまざまな文体を模写してパロディー作品に仕上げる「パスティーシュ小説」の分野を開拓。一躍人気作家になった。「まさにこけの一念。なんとか東京にしがみついて頑張ろうと思った」と振り返る。

 「名古屋の作家というイメージがつくのだけは避けたかった」というが、気付けば名古屋にちなむ作品をたくさん書いていた。東京に居を構えて半世紀。すっかり異郷の人になったはずなのに、今も愛知県から講演や文学賞審査の依頼が引きも切らない。

 昨年、名古屋市が主要八都市で意識調査を実施。「訪問したい街」のランキングで、同市がぶっちぎりの最下位になった。そんな“自虐的アンケート”が話題になって以降、名古屋に関する本の出版が相次いでいる。本書もそのひとつだ。

 名古屋論の古典ともいえる『蕎麦ときしめん』は「悪口を並べた作品」なのに、地元住民に大ウケした。名古屋人は悪評であれ、話題にされることを喜ぶという。よそと競り合う気概も、よそから人を呼び込む意欲も希薄。その背景には、皆が現状に満足している豊かさがあるとみる。「名古屋人は自虐的なようで、実は自信にあふれている。これからも名古屋は名古屋らしくあってほしい」

 ベスト新書・八九〇円。 (岡村淳司)

 

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