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【書く人】

皿洗いから始める「自立」 『弘兼流 60歳からの楽々男メシ』漫画家・弘兼憲史さん(70)

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 レシピ本のようなタイトルだが、エッセーだ。『課長島耕作』などの作品で知られる漫画家の弘兼憲史さんが、中高年男性がラクに楽しく、さらに自立して生きていくための食と料理について書いた。「奥さんが先に亡くなることや病気で倒れることだってままある。そうなったときに途方に暮れないように、少しずつ習得していきましょう、と」

 未経験の人が料理するには心身ともに「壁」がある。その壁を取り払い、背中を押す助言が満載だ。「スーパーで特売のナスを買ったら『これをどうしよう』って考えるのは創造力や企画力。どう料理するかは段取り力。男はサラリーマン時代にそうした力を訓練してるはずだから、料理に生かさない手はない」

 台所は通常、妻の領域。いきなり入っていくと嫌われる。そんな事態を避けるための助言も。最初のアクションは「洗い物はオレがやるよ」。第二段階は買い出し。そしてラーメンやご飯、みそ汁など簡単料理から始める…。「男が台所に入ると嫌われるのは、やるだけやってほったらかしにするから。まずは洗い物をした方がいい。それから皿のしまい方とか覚えて、料理に入っていったらいいかも」

 「中華合わせ調味料で一番使うのは『Cook Do』のチンジャオロウスー」「最近気に入ってるのは『焦がしにんにくのマー油と葱(ねぎ)油が香るザ・チャーハン』」…。四十年以上前から、スタジオでアシスタントと料理してきただけあって、おいしく時短で料理するための食材活用法には、主婦の井戸端会議を聞くような生活感がある。

 古希を迎えた、団塊の世代。「黄昏(たそがれ)流星群」「会長島耕作」「学生島耕作」と三作の雑誌連載を抱え、シニアの新たな生き方を提案するエッセーも次々にヒットさせている。提案の中で多くの男性に倣ってほしいのは、家庭での「自立」。「男は大いに誤解してて、定年になって妻に『苦労かけたから旅行行こう』なんて言うが、妻は友達と行く方が楽しい。子どもが社会に出て、家も買ってあったら夫婦共通の目的もそんなにない。だいたい趣味も違い、うちの場合も好きな音楽も、本も映画も違う」。自立し、お互いに自分の世界を大切に。その先には、男も女もよりラクで楽しい関係があるのかもしれない。

 マガジンハウス・一〇八〇円。 (岩岡千景)

 

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