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【書く人】

暗部を探る駆け引き 『トマト缶の黒い真実』 フランス人ジャーナリスト ジャン=バティスト・マレさん(31)

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 「食料品の世界は大手企業が支配し、民主主義が守られていない。自分が日々消費するものについて深く知らないことは、非常に大きな罪だと感じました」。世界中に流通するトマト缶から、農業ビジネスの暗部に迫ったジャン=バティスト・マレさんは、二年半にわたる取材を終えた感想を語る。

 農業が盛んなフランス南部のプロバンス地方で生まれた。二〇〇四年、古里のトマト加工工場が中国企業に買収された。それを機に地元農家との取引が打ち切られ、情報もシャットアウトされるように。工場の中を見たいと交渉しても、決して許可されなかった。当時現場で目にしたのが、メードインチャイナと書かれた青いトマト缶。「なぜ中国のものがここに?」。その疑問が、長い旅路の出発点になった。

 濃縮トマトでビジネスを広げる中国の将官、産地を誤認して買い求める消費者、法の網をくぐって過酷な日雇い労働をする移民…欧米、中国、アフリカと世界を巡り、あまたの証言を集めた。それらがパズルのピースのように組み上がり、中国の経済施策の貪欲な実態や、弱者を搾取するグローバル経済のひずみが浮かび上がる。その旅の果て、著者はトマトが原料とは思えないほど黒ずんだ粗悪品「ブラック・インク」にたどり着く。

 取材対象が隠したがるものをいかに暴くかがジャーナリストの手腕。本書には監視の目を盗んで工場内を捜索したり、キーパーソンに取り入って情報を引き出したりと、スリリングな場面も登場する。「大事な情報を握る人の話は九十パーセントくらいうそ。にこやかに聞きながら駆け引きをして、最後にしっかり裏付けをするのがポイントです」という。

 「私は楽観主義なので、よりよい世界をつくるために貢献できると思っている。ただし、それは座って眺めているだけでは実現しない。動くことが大事だ」と力を込めるマレさん。前作では巨大企業「アマゾン」の配送センターに潜入取材して内情を告発。フランスでベストセラーになった。第三作にあたる本書では、国際的なジャーナリストとして飛躍した。「自分はまだまだ駆け出し。取り上げたいテーマもたくさんあるので、これからもっともっと記者として成長したい」

 田中裕子訳、太田出版・二〇五二円。 (岡村淳司)

 

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