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【書く人】

補欠人生っていい 『恨みっこなしの老後』 脚本家・橋田寿賀子さん(92)

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 「おしん」や「渡る世間は鬼ばかり」などのドラマで、普通の人の悲喜こもごもを書いてきた脚本家の橋田寿賀子さんが、自分を楽にする老後の生き方をつづった。

 娘に対する文句ばかり言っていたお姑(しゅうとめ)さんの悲しい最期を見て「死の間際で人を恨みたくない」と、この表題に。けれども「私には恨みを持つ人はいないんですよ」と語る。「子どもはいないし亭主にはじゅうぶん返してもらって感謝してるし、お友達にだって何かしてあげて裏切られたって覚えがない。みんな私が優しくして差し上げた以上に、していただいてる」

 <何をもって幸せとするかは、その人次第><自分が意地悪で、鬼をいっぱい飼っていることを自覚していると、人に何かされたときにも、腹が立ちにくい><人生「二流」がちょうどいい>−。本につづられた考え方なら心穏やかにいられるだろうとうなずける。

 「本当に、二流人生はいいですよ。学生時代もバレー部で補欠だったので試合で方々行けて、でも何もしないで試合見たりボール拾ったりしてればよくて、補欠人生ってのはいい。一番になりたいと思ったら苦労しますよ。賞が欲しいとかいいもの書こうとか思ったら神経すり減ります。二流でいいと思うから書き飛ばして、たくさん書けた。傑作は一つもないですけど」

 とはいえ、一九八三年から放送されたNHKの連続テレビ小説「おしん」は、平均52・6%、最高62・9%と、ドラマ部門ではいまだに破られていない高視聴率を記録している。「いい時代だったんですよ」

 『文芸春秋』に寄稿するなどして話題を呼んだ「安楽死」についても、人に迷惑をかける状態や自分が何もわからない状態になったとき、自分のように家族がいない人は「選択肢として安楽死を選べるといい」と書く。「病気の人に死ねと言うことになる、障害者が殺された事件も肯定することになるからいけないって、反論がいっぱいきました。でも、そういうときが来たら死なせてくれるって思えば今を安心して生きられる。生きる『保険』が欲しいだけなんです」

 窓から海が見える熱海のご自宅で話を聞いて、帰り際、卓上の和菓子を包んでくれた。ドラマの場面のような温かいもてなしに、幸福感もいただいた。

 新潮社・一〇八〇円。 (岩岡千景)

 

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