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【書く人】

民間人攻撃の起点に 『沖縄からの本土爆撃 米軍出撃基地の誕生』 関東学院大教授・林博史さん(63)

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 第二次世界大戦末期の沖縄戦で、米軍は壮絶な攻防の傍ら沖縄本島の各地に飛行場を建設し、日本本土を猛爆撃した。本土空襲といえば、サイパンやグアムから飛来した爆撃機B29のじゅうたん爆撃か、空母艦載機の機銃掃射というイメージが強い陰で、見過ごされてきた無差別攻撃。その加害実態を本書が明らかにしている。

 沖縄から本土への爆撃は当初、沖縄の攻略に邪魔な日本軍機の排除が主な目的だった。しかしやがて、次の段階である南九州進攻の地ならしへ性格を変えたという。本書ではそれを「テロ、重大な戦争犯罪」と厳しく断じた。「目標は早い段階から軍事施設に限定されず、九州の民間人に恐怖を与え、精神的に屈服させる、まさに無差別の要素が加わっていきました。明らかに民家と分かる建物や馬車まで襲っていますから」

 基地は戦後も残り、沖縄には今なお在日米軍専用施設の七割が集中する。この問題を考えるなら、基地がどう造られ、使われたかを知る必要がある−そんな思いから、本書の執筆に当たっては米国立公文書館が所蔵する戦闘報告書をはじめ、膨大な史料を分析した。

 政府が普天間飛行場の辺野古移設を強行する中、基地問題を考える材料を一日も早く提供するために、調査の開始から一年で書き上げた。探り当てた事実を、出典を明示しつつ淡々と紹介する構成が、爆撃のむごさを際立たせている。

 専門は現代史で、戦争や平和に関する諸問題を追い続ける。原点は中学生の時。本土復帰前の沖縄を家族で旅した。芝生が美しい米軍基地内と、どろんこのフェンス外との落差。火炎放射の焼け跡。そして飲み物を買った店の女性が料金を「十セント」と言ったときの衝撃を心に刻み、以来、関心を寄せてきた。

 その沖縄を足がかりに、米軍は戦後も朝鮮半島やベトナム、中東と、世界へ展開し続ける。「沖縄から飛んでいって攻撃する、その最初のターゲットが日本人でした。それを日本は『戦争だったから』で処理してしまい、米国も無差別爆撃の反省がないまま今も空から爆弾を落としている」

 歴史を振り返り問題点を考えることが、より良い社会づくりにつながると信じる。「反省なき者は同じ過ちを繰り返す。忘れることが未来志向だなんて、あり得ません」

 吉川弘文館・一九四四円。 (谷村卓哉)

 

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