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【書く人】

民衆の力、思い続ける 『平岡正明論』 批評家・音楽家 大谷能生さん(46)

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 ジャズ、革命、犯罪、極真空手、水滸伝、歌謡曲、大道芸、浪曲、新内、落語…。「俺」の一人称を用いた速度感あふれる文体で、あまたのジャンルを論じた評論家・平岡正明(二〇〇九年に六十八歳で死去)。その全体像を描き出した。

 二人の共通点はジャズ。音楽評論家の活動を始めた一九九〇年代後半から、平岡もジャズ論を立て続けに刊行した。「演奏や音楽史を考えるのに、すごく参考になった」と振り返る。「平岡さんは米国の黒人が生んだジャズを、日本の土俗的なものと地続きに捉えた。本当に独創的」

 一方で死去から何年たっても、平岡を正面から論じる本は現れなかった。「とにかく全体像が知られていない。まずは入門というか、案内みたいな本を自分が書くしかないかなと」

 百二十冊を超える平岡の著書を、そこで紹介される膨大な本や音源に当たりながら数年がかりで読み解いた。「音楽は聴いていたからいいけど、マルクス主義とか俺、知らないしね」。そう苦笑しつつ、「でも、そこが重要。本のテーマはみんな共通していて、『民衆の力』だった」

 平岡は六〇年に早稲田大に入学。安保闘争の現場に、新左翼党派の一員として繰り返し参加した。生涯をかけて追い求めたのは、一国だけでなく、世界全体での革命を目指す「世界革命」だった。そのジャズ論も、六〇年代に米国社会を揺るがした黒人の「ブラックパワー」を、どのように民衆の革命に生かせるかを問題とした。

 「六〇年安保が考え方の基盤になっていて、そこから離れていない。世界革命が大テーマだからこそ、国際的な視点で、あれほどいろんなことを論じてきた」

 平岡の思想には、あっけらかんと暴力や犯罪を肯定する過激さがある。だが、「平岡さんのような荒っぽい話が、今こそ必要じゃないか」と語る。

 「二十世紀は『戦争と革命の世紀』と言われるけれど、二十一世紀には戦争だけが残された。日本も遠い国々の戦争に関わるようになってきている」

 平岡は一九一七年のロシア革命を高く評価した。そこでは第一次世界大戦に参戦する国家への、民衆の反感が起爆剤となった。「戦争と別の道として、革命があるって言い続けた。芸能にしろ、政治にしろ、平岡さんの本は今の日本人が忘れてしまった『別の可能性』への想像力に満ちている」

 Pヴァイン・二五九二円。 (小佐野慧太)

 

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