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【書く人】

人間関係が背中押す 『美容整形というコミュニケーション』 関西大総合情報学部教授・谷本奈穂さん(48)

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 化粧、少女漫画、恋愛。社会学者として、女性に関わる事柄に関心を持ち続けてきた。「どれも文化の大きな割合を占めているのに、学問の対象として軽んじられてきた面がある」。化粧の延長線上と位置付けて研究を始めたのが、美容整形の世界だ。

 <日本は、世界でも有数の美容整形が盛んな国といえる>と、序章にある。国際美容外科学会の統計では、二〇一六年に日本で行われた美容外科手術と、メスを入れないレーザー治療などの「美容医療」は、合わせて百十三万件を超す。調査可能な二十四カ国・地域で三番目に多い。

 手術や治療を受ける大半は女性。本書は、なぜ彼女たちが美容整形に踏み切るのか、アンケートとインタビュー調査でひもといた。浮かんだのは先行研究ではあまり注目されなかった、女性同士のコミュニケーションとの関係性。ごく気軽なおしゃべりでの互いのファッションチェック、美容情報の交換などだ。

 例えば二千人が対象のアンケートでは、美容整形を希望して実際に経験する人ほど、母親や姉妹、女友達といった同性の外見についてのアドバイスを重視する割合が高かった。

 <妹も(手術)するから一緒にという(笑)。(略)1人だと勇気は出なかったと思う><もうちょっとああしたら、もっとこの人はきれいに見えるのにな、とか。(略)友達の場合やったら普通に言います>。インタビューに応じた整形経験者も、姉妹で一緒に手術したり、自分が満足した整形を人にも勧めたりという経験を語る。

 他の女性よりも美しくなりたいという劣等感や競争心が引き金になるイメージが、美容整形には根強い。実際はもっと気軽で、ポジティブな動機も存在していた。「世間が思うほど女同士は競い合っていないよ、というのは私が普段から感じていること。研究結果にそれが表れたのは、幸福な偶然の一致でしたね」

 とはいえ本書は決して、美容整形を勧めるわけではない。「害悪と否定するのでもない。ただ今までにない視点で分析して、実態を知らしめたかった。整形の善しあしは一人一人が決めるべきことですから」

 施術のため韓国などを訪れる美容ツーリズム、会員制交流サイト(SNS)の影響など、今後も掘り下げるつもりだ。

 花伝社・一七二八円。 (川原田喜子)

 

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