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【書く人】

少年期の夢追う出勤前『ちょっと一杯のはずだったのに』 作家・志駕晃さん(55)

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 二枚の名刺を持つ男、である。志駕晃は作家としてのペンネーム。昨年出したデビュー作のミステリー『スマホを落としただけなのに』は二十万部を突破し、二作目『ちょっと一杯のはずだったのに』をこの夏、刊行した。もう一枚は本名で、ニッポン放送の関連会社の常務としてイベントなどを取り仕切っている。

 小説を書き始めたのは、ニッポン放送で働いていた四十八歳のころ。「四十代で管理職になると時間に余裕ができたんですよ。そこで昔、作家になりたかったという夢が巡ってきて、書くなら今だなって。人生百歳時代。六十代でサラリーマン生活が終わっても、まだ人生は残っている。作家は元手がいらないから、宝くじを買うより可能性はありますよ」。ミステリーを選んだのは「市場が大きいから。俺が純文学を書いてもしょうがない」と笑う。

 作家に憧れたのは中学生時代。星新一が好きで、ショートショートを書いていた。高校生になると情熱は漫画へ移り、明治大では漫画研究会に所属。マスコミを志願してラジオ局へ入社後は、漫画研究会の先輩かわぐちかいじさんの漫画『沈黙の艦隊』をラジオドラマ化したり、人気番組「ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポン」のディレクターを務めたりして、リスナーに愛されてきた。

 少年時代の夢を追うと決めてから執筆に充てているのは朝五時から七時まで。「出勤前の締め切り感は半端なくて、能力も半端なく高まります。前の晩、酔っぱらっていても絶対に毎日書いています」

 デビュー作は宝島社の『このミステリーがすごい!』大賞に応募し、受賞には至らなかったものの、ベストセラーの可能性を秘めている「隠し玉」として刊行された。自分がスマホを落としたことで恋人の人生を狂わせていくという日常と背中合わせの恐怖を描いた作品には、映画化の申し込みが殺到。北川景子さんの主演作として十一月の公開が決まっている。

 第二作の『ちょっと一杯…』も、酔っぱらって記憶をなくしたら殺人犯にされていた−という身近な設定から物語を展開した。主人公はラジオ局のディレクター。自身の経験が育んだ作品でもある。「一気読みができるスピード感を大事にしてます。新しい構造の小説に挑戦していきたい」。いくつになっても夢は人を輝かす。宝島社文庫・六八〇円。 (矢島智子)

 

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