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【書く人】

こんな本ないのが理想 『ゲイだけど質問ある?』 歌人・鈴掛真(すずかけしん)さん(32)

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 ゲイであることを公表し、インターネット上で短歌などを発表して若い世代の共感を集めている。本書は、性的少数者(LGBT)への理解が進む一方で「ゲイは女性的」というような誤解も多いと痛感する著者が、入門書になれば、との思いも込めた「代表作として発信できる紙の本」だ。「ゲイが特別な態度で接する存在じゃないと分かってもらえたら」と願う。

 「何人に1人がゲイなの?」「ゲイの友情と恋愛の境目はどこ?」などの項目を立て、質問に答える形式で実情や意見を書いた。取り上げたのは恋愛や性の事情、日常生活からカミングアウト、家族や友人がLGBTだと知ったらどうするか、同性カップルの子育ての是非といった社会的な内容まで、幅広い。

 中でも、LGBTへの差別的な内容が批判を集めて休刊した月刊誌『新潮45』を取り上げたくだりについては「この件があったから、絶対に今年中に出版したかった」と力がこもる。寄稿が問題になった杉田水脈(みお)衆院議員に対しては「生産性」の尺度を持ち出し、国民を差別していることを<国会議員としての資質を問う必要がある>と非難した。「『生産性はある』と反論する人も、相手の尺度で計っていることは変わらない。人間は生産性で計るものじゃない」。寝たきりの人など社会的弱者全体に波及しかねない発想だと危険視する。「それを言っているのが、国民を代表する国会議員だということが怖い」

 各話の合間には四十八首の短歌を挿入した。

・初めから解(わか)り合えやしないことを知って僕らは何度も話す

・「愛してる」言葉に色があったなら世界は同じ色をしている

 歌人天野慶さんの歌集にひかれ、大学四年で歌作を始めた。自分に合う表現方法を模索し、美術系の学部であらゆる分野をむさぼった末に、短歌の「言葉をそぎ落としていくシンプルさがぴたっとはまった」。卒業後に勤めた広告会社を辞めて創作に本腰を入れたのを機に「表現者として人の目を気にせず生きたい」とゲイを公表した。

 出身の愛知県春日井市では、中学校に招かれて短歌の授業もする。生徒に同性愛者であることは伝えるが、ことさらに強調はしない。「最終的には、こういう本が必要ない世の中が理想ですから」

 講談社・一六二〇円。

 (松崎晃子)

 

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