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【書く人】

知れば楽しい世界の教養 『クラシック音楽全史』 音楽プロデューサー・松田亜有子(あゆこ)さん(43)

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 わが国最古のオーケストラとして活動する東京フィルハーモニー交響楽団(東京フィル)。そのルーツは一九一一(明治四十四)年に産声を上げた名古屋の、いとう呉服店(現・松坂屋)少年音楽隊にさかのぼる。尋常小学唱歌が制定され、国全体に西洋音楽が根付き始めた時期にスタートした楽団の歩みは、日本の西洋音楽史と軌を一にするといってもいい。松田さんは東京フィルの広報渉外部部長として「創立百周年記念世界ツアー」「日韓国交正常化五十周年記念公演」など海外公演にも手腕を発揮。長年の蓄積と体験を基にした初の著作が本書だ。

 欧米ではビジネスにも役立つ教養とされているクラシック音楽。「まず読んで楽しんでほしい」と、興味深いエピソードを交えながら、クラシック音楽とは何かやオーケストラの歴史などを解き明かす。そして、そのルーツともいえる「グレゴリオ聖歌」から歩みをたどり、モーツァルトやベートーヴェンらの名作がどのような時代背景から生まれたのかも分かりやすく解説している。巻末には、クラシックを楽しめる映画三十作と、おすすめの十曲を厳選して掲載。格好の入門書となっている。

 山口県下関市出身で、長崎市の活水(かっすい)女子大音楽学部ピアノ・オルガン学科を首席で卒業。在学中は図書館にあるクラシック関係の本を読みあさり、音楽を軸に西洋史の流れを頭にたたきこんだ。「当時の自筆ノートがとても役に立ちました」と明かす。

 裏方としてクラシックの魅力を伝える仕事に従事したい−こんな思いから、卒業後は尊敬する作曲家・三善晃(みよしあきら)さんが芸術顧問を務めていた長岡リリックホール(新潟県長岡市)に就職。主担当として初めて手掛けた東京フィル公演を完売にして注目を浴び、同フィルにスカウトされた。音楽ビジネスのためには「経済の現場を知ることが重要」と、途中、経営再建を手掛ける民間企業「経営共創基盤」(IGPI)などで約六年働いた異色の経歴を持つ。

 「演奏会場では宗教や国の壁を越えて感動を共有できるのがクラシック音楽の力。生きる勇気がわき、自身の優しさにもつながる」と力説する。本書の出版を花道に東京フィルを退職。コンサートを企画・プロデュースする会社を設立した。“クラシックの伝道師”の新たな旅立ちである。

 ダイヤモンド社・一七二八円。 (安田信博)

 

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