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【書く人】

気持ち、ありのままに『実録 解離性障害のちぐはぐな日々』 イラストレーター・Tokinさん(35)

作品を展示している東京・三鷹のギャラリーカフェで

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 解離性同一性障害、いわゆる「多重人格」の実体験を描いたコミックエッセーだ。「今話しているのは、普通のトキンさんですよね?」「はい」。念のため、取材中にはこんな質問もした。

 普通のトキンさん(主人格)の他に、幼い「子どもトキン」や攻撃的な「黒トキン」、困ったときに助けてくれる「ヒーロートキン」など複数の副人格がいるという。「子どもの頃から頭の中に人がいた。誰でもそうだと思っていました」

 障害が判明していく経過や、試行錯誤して体得した障害と付き合うためのコツをつづっている。自傷行為など深刻な場面も登場するが、かわいい絵柄と漫画ならではのテンポの良さで、重たい気持ちにはならずに読める。「専門書を読んだら、自分も家族も暗い気持ちになってしまった。もっと当事者の声が入った本があればと思って描きました」

 心の病は目に見えない。だからトキンさんも、自分の不調の正体を知るには長い年月がかかった。

 元々、頭痛や腹痛など体調を崩しやすかったが、原因が分からなかった。高校二年の冬に症状が悪化し、初めて精神科に。努力して入った進学校だったが、中退を余儀なくされた。相談機関を渡り歩き、解離性障害と判明したのは七年後、二十四歳の時。一念発起して就職した印刷会社はブラック企業で、退職と入院を経て、さらに双極性障害(いわゆる、そううつ病)もあることが分かったのは二十七歳の頃だった。

 二〇一二年、本書の原型といえるフリーペーパー「ゾンビ道場」を個人で創刊。誌名の由来は、死(うつ)と復活(そう)を繰り返すことから。口コミで読者が増えて、現在は北海道から沖縄県まで全国の書店店頭などで平均八百部を配っている。地道な活動が編集者の目に留まり、本書が誕生した。

 「読んで役立つ実用書を目指しました。当事者は気持ちを分かってもらえて、周囲の人は『そうなんだ』と分かって、安心してほしい」。本書には京都大の岡野憲一郎教授の解説やコラム、相談窓口の一覧なども収録している。

 本業のイラストは幻想的な作風で「心理とおとぎ話」がテーマ。「『喜怒哀楽』みたいな分かりやすい感情ではない心象風景を描いています。私だけの問題ではないと確信しているので」。今後は、漫画や絵本のフィクションとしても自分のテーマを表現したいという。

 合同出版・一五一二円。

 (谷岡聖史)

 

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