東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【書評】

林業がつくる日本の森林 藤森隆郎 著

写真

◆健全化へ垣根越えて

[評者]宇江敏勝=作家・林業家

 私の住む和歌山県南部は林業地で、見わたすかぎりスギとヒノキに埋めつくされている。あいだの熊野古道はユネスコの世界遺産だから訪れる人も多い。ほとんどは植林の中の道で、里に出れば空き家が眼につき、田畑は耕作放棄されて草が茂っている。これらの景色を都会の人々はどのように見て歩くのだろう。

 著者によれば、日本の国土の約七割を占める森林のうち植林は四割にのぼるという。間伐などの手ぬきで森林は荒れ、輸入外材におされて国産材の自給率は三割弱。山村は疲弊し後継者もいない、という認識は私も共有する。健全な森林は温暖化防止をはじめ、水資源や土壌、生物多様性など地球環境の保全にとって不可欠である。どうしたらよいのだろう。

 森と林業にはさまざまの立場の人が関係している。政治家、官僚、研究者(著者もその一人)、技術者、山林所有者、労働者、流通業者、消費者などである。本書はそのあいだの合意と調和をはかる科学的根拠が必要だという視点で書かれているが、現場の経営と管理を把握すべきフォレスター(森林官)がわが国にはいない、という指摘には驚かされた。

 もっとも必要なのは一般市民の理解と支援だと強調している。私も語り部として、熊野古道を案内して歩くときは、できるかぎり森を見てもらうような話をするのである。

(築地書館・1944円)

 <ふじもり・たかお> 1938年生まれ。農学博士。著書『森づくりの心得』など。

◆もう1冊 

 田中淳夫著『森と日本人の1500年』(平凡社新書)。日本の森が人との関わりの中でどう変わってきたかを追う。

 

この記事を印刷する

PR情報



ピックアップ
Recommended by