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【書評】

シルバー・デモクラシー 寺島実郎 著

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◆感性の世代の責任を語る

[評者]古関彰一=獨協大名誉教授

 団塊の世代に生を受け、いまやシルバーになった著者が体験的に戦後民主主義を顧み、シルバーとして未来に生きる責任とは何かを語りかける。ありそうなテーマであるが、なかなか出会うことのない内容の書物である。

 著者は、多くの団塊の世代と同様に貧しかった少年期、「全共闘」と対峙(たいじ)した学生時代を振り返りつつ、戦後世代を解剖する。戦後世代は、都市化された生活者であると同時に「間接生産労働に基盤を置き」、精神的には「感性的個人主義」を身に着けてきた反面で「論理性と公共性が希薄」であったと指摘する。

 それは確かに政治的にも「民主党政権の失敗は『団塊の世代の失敗』でもあった」と断罪する点にも通じる。「キレイごとの世界を脱して何をなし遂げるかの覚悟」がない「感性的個人主義」は戦後世代全般に通底している。

 ただ、その一方で戦後世代は、近代的人間の登場を可能にしたことも事実である。西欧が「近代的人間」の登場から脱近代まで四百年を要したのに対し、日本の「戦後近代化」は、「前近代から近代を突き抜けて、脱近代までを走り抜けるような『世代』がわずか三十年のあいだに凝縮的に形成された」という指摘は、実に鋭い。

 そこから著者がシルバーに注目する問題は、それがもたらす政治的な意味である。本書によれば、日本の高齢者人口は、二〇四〇年には四割に迫る。否、有効投票率でみれば、なんと六割になるというのだ。この戦後世代は、さまざまな弱点を持ちつつも、次世代に継承すべき、地球環境問題、人口の爆発、食糧問題という難題を抱えて、「共生という意識を共有した世代」でもあり、また冷戦後にイデオロギー対立の限界を知った世代でもあるのだ。

 著者の語る「シルバー・デモクラシー」は、「シルバーのため」だけではなく、シルバーの体験による、次世代を生きる人々のための、シルバーの責任を語っているとも言えるようだ。

 (岩波新書 ・ 821円)

<てらしま・じつろう> 日本総合研究所会長。著書『世界を知る力』など。

◆もう1冊 

 宮本太郎著『共生保障』(岩波新書)。貧困や孤立化など社会の分断が進むなかで、支え合って生きる制度の価値と戦略を提示する。

 

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