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【書評】

ルポ 思想としての朝鮮籍 中村一成 著

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◆プライドからの叫び

[評者]青木理=ジャーナリスト

 書名に痺(しび)れた。「思想としての朝鮮籍」。ここに本書の意味が凝縮されている。朝鮮籍にこだわる作家の金石範(キムソクポム)氏も本書でこう語っている。「もったいないくらい、いいタイトルだよ(笑)」

 しかし、この意味を直ちに理解する人は、おそらくそう多くない。中には朝鮮籍イコール北朝鮮籍と誤解している人だっているだろう。

 一九一〇年、日本は朝鮮半島を植民地化し、そこに暮らす人々も「日本人」とした。なのに戦後、一方的に切り捨てた。四七年の外国人登録令などにより、すべての朝鮮半島出身者は国籍等の欄に「朝鮮」と表記されたのである。

 その後、韓国が建国され、韓国籍に変更する者もいた。だが、朝鮮籍にこだわる者もいた。北朝鮮を支持する者もいたが、統一朝鮮を願って変更を拒む者もいた。いずれにせよ、「朝鮮」は「国籍」ではない。本書には、そのこだわりへの叫びが横溢(おういつ)している。

 「私のプライドです」(李実根(リシルグン))「元々全部朝鮮籍よ、それに尽きるわけ」(鄭仁(チョンイン))「状況にすごい憤懣(ふんまん)がある。この分断状況を続ける朝鮮人社会と、その原因である日本に対してね」(朴正恵(パクチョンヘ))

 では、私たちはどうか。為政者が歴史を忘却し、憎悪の罵声を吐く愚か者までが現れる中、本書の叫びが一人でも多くの「日本人」に突き刺さることを願う。

 (岩波書店・2160円)

 <なかむら・いるそん> 1969年生まれ。毎日新聞記者を経て、フリーに。

◆もう1冊 

 中村一成著『ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件』(岩波書店)。学校襲撃事件を通して、ヘイトクライムの原点に迫る。

 

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