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【書評】

ねえ君、不思議だと思いませんか? 池内了 著

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◆先を急ぐ科学に警告

[評者]金子務=科学史家

 きわめて精力的に幅広く社会的発言を続けている宇宙物理学者による最新コラム集。企業広報誌二種と、本紙に連載した六十篇ほどの時代証言録である。数年前に大学を去り、いまは市民科学者として、さまざまな問題を「不思議だと思いませんか?」と寺田寅彦風に問いかける。「批判的専門性」をもって「生活者の目」で捉えていくのが市民科学者だそうで、なるほど、貴重な指摘が多々ある。

 「小さな科学館・博物館のネットワーク」作りやグリーン・イノベーションの提唱は重要だ。地下資源に頼らず地上の太陽光・風力・水力といった「グリーン」な資源に注目した文明の転換を子供たちも巻き込んで展開しようとも呼びかけている。「科学ツーリズム」の分類学も面白い。ノーベル賞の受賞はビッグニュースだが、素粒子論でも宇宙論でも生物医学でも、多くは一九七○年代までの業績だと指摘して、大方の日本人には好(よ)い冷や水である。そんな「批判がはばかられる不思議な問題」には、再生治療や臓器治療、宇宙開発、東京五輪などがある。経済論理や競争原理優先の結果、原発事故やSTAP細胞不正事件が起きた。「急ぎすぎる現代」への警告である。

 著者は宇宙の軍事化が進み、軍事研究に科学者が群れる現状を憂える。ドローンなど、科学技術のデュアル・ユース(民軍両用になる)問題は重要な課題だ。

(而立書房・2052円)

<いけうち・さとる> 1944年生まれ。名古屋大名誉教授。著書『科学者と戦争』。

◆もう1冊 

 池内了・島薗進著『科学・技術の危機 再生のための対話』(合同出版)。原発事故や軍事利用など科学の課題を語る。

 

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