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【書評】

単身急増社会の希望 藤森克彦 著

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◆貧困、孤独死防ぐ支え合い

[評者]古田隆彦=現代社会研究所長

 日本国内では今、七人に一人が一人暮らしだ。それが二〇三〇年になると、五十代の男性で一・三倍、女性で一・五倍に増え、八十歳以上では男女ともに一・五倍を超える。背景には、年齢構成の変化に比例して単身者が増える「人口要因」と、未婚化や親子別居化などでその数が変わる「非人口要因」の、両面がある、と著者はいう。

 未婚化の進行で、四十〜五十代の単身予備軍も増えている。無業者の比率が高く、大半が親と同居して援助を受けているから、親が死ねば単身となり、たちまち貧困に陥る。

 こうして急増する高齢単身世帯では、貧困率が高く、会話の相手も減少して、孤立死の比率も高まる。

 どうすればいいのか。本書では「住宅手当制度」の導入、「地域包括ケアシステム」の構築、厚生年金の適用拡大、「ジョブ型正社員」という新しい働き方の採用などを、政府、コミュニティー、企業に向けて提案する。

 そのうえで、今後の日本の社会制度を、従来の家族依存型やアメリカ的な市場依存型ではなく、スウェーデン風の政府依存型へと転換し、「ある程度大きな政府」をめざすべきだ、と主張する。政府の無駄を徹底的に排除しつつ、社会保障制度を強化して、適切な所得再分配策で「支え合う社会」を構築すること、これこそが「希望」なのだ、という。精緻な分析と視野の広い提案は、まさに単身化対策の底本ともいうべき一冊だ。

 四十数年前、経済人類学者のK・ポランニーは、家政(個人)を支える歴史的、社会的な制度として、互酬(ごしゅう)(地縁・血縁)、再配分(政府)、交換(市場)の三つをあげ、今後はこれらを巧みに組み合わせた「複合社会」へ進むべきだ、と述べていた。本書を読むと、長寿・単身化時代に生きる私たち一人ひとりにとっても、さまざまな社会制度の構築へいかに関わり、どのように活用していくべきか、個人的な対応力が問われることになろう。

(日本経済新聞出版社・2808円)

<ふじもり・かつひこ> 1965年生まれ。みずほ情報総研研究員。

◆もう1冊

 上野千鶴子著『おひとりさまの老後』(文春文庫)。単身者の老後の生活や心構えを社会学者が考察。「おひとりさま」本の嚆矢(こうし)。

 

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