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【書評】

「復興」が奪う地域の未来 山下祐介 著

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◆被災者手帳交付など提言

[評者]鎌田慧=ルポライター

 原発事故後の「強制避難」は、政府の避難指示によるお墨付きだが、「自主避難」は勝手に逃げたといわれ、「自己責任」と復興大臣にまであげつらわれる。強制と自主とにかかわらず、避難者は子どもの世界にまで浸透した「カネが入ったろう」というやっかみと「バイ菌」という差別の視線に曝(さら)される。「汚染水はコントロールされている」も「復興の進展」という発言も、安倍政権の「ポスト真実」だが、この言説が事故苦のあと、さらに避難者を苦しめている。

 震災後六年たって、政府は避難指示地域を縮小して「帰還」へ誘導、自主避難者は、住宅補助を打ち切られ路頭に迷っている。「復興と称して多額の金をつぎ込みながら現地復興には何ら寄与せず、被害者を守ることにさえ失敗し、大規模な土木事業を再開して、公共事業に先祖返りしてしまった」

 「帰りたい、しかし帰りたくない」という避難者たちのアンビバレントな感情には、被曝(ひばく)の恐怖が介在している。年間被曝線量二〇ミリシーベルトまで許容する避難指示解除によって、将来被曝に起因する病気が発生したとき、政府はどんな責任をとるのか。政府の復旧事業とは、おもに除染とインフラ整備だが、「敗軍の将が敗戦処理している」と著者は批判する。

 復興計画の失敗は、政府が政策形成のフィードバック・プロセスをもっていないからだろう。その軌道修正は、政権を変えなければできないのか。

 著者が学術会議社会学委員会で提案した第三の道とは「長期避難・順次帰還」である。その政策パッケージとして、二重住民登録、被災者手帳、セカンドタウンなどがある。応急収容施設というべき仮設住宅での生活は、せいぜい二年が限度である。そこで六年も暮らさせた政府の無策が腹立たしい。

 本来ならこれまでのコミュニティと生活とが維持できる「セカンドタウン」が必要だった。つまりは、国土の狭隘(きょうあい)な日本には原発は無理だったのだ。

(岩波書店・2808円)

<やました・ゆうすけ> 首都大学東京准教授。著書『東北発の震災論』など。

◆もう1冊

 吉原直樹ほか編著『東日本大震災と<復興>の生活記録』(六花出版)。震災復興や支援のさまざまな局面を解説・報告する集成。

 

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