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【書評】

日本犬の誕生 志村真幸 著

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◆純血種探しに始まる

[評者]片野ゆか=ノンフィクション作家

 三角の立ち耳に巻き尾といった特徴を持つ日本犬は、古くから我が国を代表する犬として愛されてきた。だがその姿は、昭和初期に“生まれた”ものだった。本書は、明治維新以降に洋犬との雑種化で絶滅が危惧された日本犬の、保存活動の光と影に迫る歴史研究書である。

 保存活動をおこなった「日本犬保存会」は、後にハチ公を世に広めた斎藤弘、オオカミ研究で有名な平岩米吉など愛犬家によって設立。主な方法は、(1)地方調査の実施で純血種を探す、(2)飼育頭数を増やす、(3)純血の犬を守り保存する、というもので、その過程で「日本犬標準」を定めた。並行して天然記念物指定を推し進め、昭和六〜十二年に秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬を“真正な日本犬”と定めて今に至る。

 南方熊楠研究が専門の著者は、犬好きな熊楠が平岩米吉と交流があった事実を知り膨大な資料を読み解く。簡易な調査で多数の犬が選外となるなど、日本犬が排除と選別を経て創られたと指摘する。

 だがやはりあの保存活動なしに、今の時代に凜々(りり)しく愛らしい犬たちを愛(め)でることはできなかっただろう。数年前、西郷隆盛の愛犬といわれのある薩摩犬を見て心魅(ひ)かれた。歴史があきらかになることで、既存の枠にとらわれず日本の犬を評価する流れができればと思う。

 (勉誠出版・2592円)

<しむら・まさき> 1977年生まれ。南方熊楠研究会運営委員。

◆もう1冊 

 菊水健史ほか著『日本の犬』(東京大学出版会)。その行動や進化、人との関係など、日本犬研究の最前線を紹介。

 

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