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【書評】

徹底検証 日本の右傾化 塚田穂高 編著

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◆無意識の容認行動 浮かぶ

[評者]大澤真幸=社会学者

 世紀転換期以降、日本社会は右傾化してきたと言われている。現在、トランプ氏の出現や移民・難民の拒否との関係で欧米諸国の右傾化が問題視されているが、日本社会もこの二十年間、右傾化のトレンドにあったとされている。だが、この印象は正しいのか。右傾化の具体的な内容は何か。こうしたことを徹底的に調査し、記録し、検証した論文集が本書である。社会学者、宗教学者、ジャーナリスト等、二十一名もが寄稿している。「右傾化」の厳密な定義をあえて拒否し、本書はこの語によって指示されている現象を余すところなく包括的・多角的に、つまり社会意識一般から政治行動、メディアや宗教の状況まですべてを論じている。

 ここでは、本書全体から私が学んだことだけを書いておく。一方で、右傾化が進行していることはまぎれもない事実である。ネットにあふれるレイシズムや路上でのヘイトスピーチのような極端なものから、「日本スゴイ」言説の氾濫、教育や家族についての保守的な法律改正への動き等々、同時多発的な右傾化の潮流がある。

 しかし、他方で、本書で検討されている意識調査を見ると、市民・有権者の回答は、はっきりとした右傾化を示してはいない。有権者に、自分のイデオロギー的位置を自己判定させても、「右」寄りの人が増えているわけではない。改憲支持者は、十三年前の方がずっと多かった。

 この矛盾をどう解釈すればよいのか。右傾化は、意外と根が浅いということなのか。私の考えは逆だ。この「矛盾」は、丸ごと事実とみなさなくてはならない。これこそが現代の右傾化の本性だ。つまり、無意識の右傾化とでも見なすべきことが進捗(しんちょく)しているのである。自分が特に「右」であるという自覚はない。しかし、その人の行動−消極的な容認をも含む行動の全体−は「右」を指している。この意識と行動の間のねじれこそ、現代の右傾化を下支えしているのではあるまいか。

(筑摩選書・1944円)

 編者のほか、斎藤貴男・島薗進・高史明・早川タダノリ・堀内京子らが執筆。

◆もう1冊

 広岡裕児著『EU騒乱』(新潮選書)。テロ・難民・財政破綻で右傾化する欧州の危機を探り、民主主義の現在を現場からルポ。

 

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