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【書評】

水中文化遺産 林田憲三 編

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◆沈没したモノが語る

[評者]坂詰秀一=考古学者

 いま、日本の考古学界で水中文化遺産に関心が集まっている。五月に開かれた本年度の日本考古学協会の総会で、セッション「水中文化遺産と考古学」が日本海事史学会との共催で設定され、調査の近況と「水中文化遺産保護条約」(日本は未批准だが、五十カ国以上が批准)をめぐり活発な意見の応酬があった。

 日本の水中遺跡は明治末に長野県諏訪湖の湖底で石鏃(せきぞく)が見つかって注目されたが、調査研究の対象となったのはごく最近のことであった。近年、文化庁による水中遺跡の調査が全国的に実施され、一二八一年の弘安の役で沈没した元の軍船や遺物が発見された鷹島神崎遺跡(長崎県松浦市)が国史跡に指定された。地元の松浦市では、日本の水中考古学の拠点づくりを目指す施設もつくられた。

 そんななかで本書が編まれた。古代から西と東を結ぶ海のシルクロードの中継点であったベトナム・タイ・フィリピンの海底調査が進み、物品を載せた沈没船が発見された。考古学の手法によって東西交易の歴史が鮮明になったのである。また、かつて日本が統治した南洋群島パラオで第二次大戦中に沈没した艦船の調査の紹介は、アジアの水中遺跡調査の新視点といえよう。日本とアジアの水中考古学の最新情報と調査技術、行政の対応について目配りよく紹介した本書は、この新しい分野の格好の入門書である。

 (勉誠出版・3024円)

 編者はアジア水中考古学研究所理事長。ほかに研究者ら10人が執筆。

◆もう1冊 

 井上たかひこ著『水中考古学』(中公新書)。元寇(げんこう)船、タイタニック号などの沈没船や海底遺跡についての研究を紹介。

 

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