東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【書評】

ひとりぼっちの辞典 勢古浩爾 著

写真

◆人の基本と言い切る

[評者]正津勉=詩人

 著者は『まれに見るバカ』『定年後のリアル』シリーズなどで人気のライター。つねに市井の一市民としての目線を大切にする。「ふつうの人」の幅でものを言うことを心にしている。じっさい長年の会社勤めの退職後に執筆にいそしむ。そこにこの人の好もしさがある。

 本書は辞典形式のエッセイで、しがなく辛(つら)い勤め人として身につけた考え方や処世を軸として、「ひとり」について考察する。「まえがき」にのべる。「自分の愉(たの)しみを見つけ、これが自分だと輪郭を明確にし、これでいいと自得すること(中略)ごくふつうの顔をして自由に『ひとり』を生きていけばいいのである。『ひとり』は人間の基本なんだから」

 いったい、このように言い切る強さはどこからくるのか。このことに関わって、この辞典にただ一つの人名項目がある。「吉本隆明 (1)わたしが愛したただひとりの知識人。(2)ふつうが一番偉い、ひとりが一番強いということを教えてくれた恩人。孤軍として生きた」

 ここに著者の立ち位置が簡潔に語られている。「あ」から「ん」まで、どの項目を開いても「ふつうが一番」「ひとりが一番」の太い芯が貫かれている。「人はしても自分はしない、人がしなくても自分はする」を格律(自分だけの原則)とする。右へ倣えの「SNS」全盛に逆行する痛快な本だ。「ひとり」万歳!

(清流出版・1620円)

<せこ・こうじ> 1947年生まれ。文筆家。著書『ウソつきの国』など。

◆もう1冊 

 吉本隆明著『ひきこもれ』(だいわ文庫)。コミュニケーションを過大視せず、孤独に過ごす時間の価値と意味を考察。

 

この記事を印刷する

PR情報



ピックアップ
Recommended by