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【書評】

みんなの朝ドラ 木俣冬 著

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◆今日一日の空気作る

[評者]あべ美佳=脚本家

 木俣冬、という著者名を見て、心臓がどきりとした。私たち脚本家なら知らぬ者はいないほど有名な、ドラマ評を書かれるライターである。

 彼女はきっと心底ドラマが好きなのだろう。連載コラムを多数抱える売れっ子なのに、一般視聴者と同じくらいミーハーな目線をちゃんと維持し、愛も毒もある文章をつづる。その深い考察の根底には、作り手への敬意が見え、実に素敵(すてき)で独特なドラマ評を書かれるのだ。

 だから人気がある。

 『ゲゲゲの女房』『あまちゃん』など主に二○一○年代の朝ドラに特化した本書にも、独自取材に基づいた興味深い撮影秘話がたくさん出てくる。「オンエア中に知りたかった!」と何度も思った。

 とくに面白かったのは、現在の朝ドラ『ひよっこ』を執筆中の岡田惠和へのインタビューだ。何の因果か、9・11の時は『ちゅらさん』を、3・11の時は『おひさま』を書いていた。世の中の悲しい出来事を受け、作り手たちの心はどう変化していったのか。祈りにも似た想(おも)いは、きっと日本中に届き響いたはずだ。

 NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」。その気風は、日本のその日の空気を明るくも暗くもすると私は思っている。たかがドラマ、されどドラマであろう。

 近い将来、自分もそんな作品に携わり、著者に評されてみたいものだ。

(講談社現代新書・907円)

<きまた・ふゆ> フリーライター。著書『SPEC全記録集』など。

◆もう1冊 

 田幸和歌子著『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)。日本の家族や恋愛を描いた朝ドラの歴史。

 

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