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【書評】

ブラック奨学金 今野晴貴 著

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◆勉強のための制度を

[評者]吉田司=ノンフィクション作家

 働きながら学ぶ一部の貧困学生をむかしは<苦学生>と呼んだ。しかし学費高騰と経済格差、非正規雇用が横行する現代の大学生はその約四割が日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金(過半が有利子)を借りて大学に入る。在学中も生活維持のためアルバイト漬けで働き、長時間労働でうつ病になり、退学に追い込まれるケースもある。卒業時には一人当たり平均三百万円もの借金を背負って新社会人のスタートを切るのだという。つまり、いまキャンパスの中は<苦学生の群れ>でいっぱいなのだ。

 社会に出ても、彼らの「貧困無限ループ」は続く。本書には、(1)ブラック企業に就職したり非正規雇用の低賃金で、奨学金返済に行き詰まる(2)JASSOの“高利貸し”まがいの厳しい取り立てで、保証人になった家族親戚にまで経済破綻の危機が及ぶ…とある。

 本書を読んで思うのは、安倍政権の国家戦略特区による獣医学部新設問題だ。もし学部が新設されても、そこに集う学生が勉学そっちのけで働かねばならない苦学生ばかりだったら、学生の知識技術の向上は望めまい。昨年のアメリカ大統領選では、公立大学の授業料無償化を叫んで立候補したバーニー・サンダース氏を若者が熱狂的に支持し、躍進させた。日本でも高等教育に対する学費・奨学金政策の改革が必要だと痛感させられた。

(文書新書・896円)

<こんの・はるき> NPO法人「POSSE」代表。著書『ブラック企業』など。

◆もう1冊 

 安田賢治著『教育費破産』(祥伝社新書)。大学をはじめ、私立小中高や進学塾などで高額化する教育費事情をルポ。

 

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