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【書評】

死後の世界 立川武蔵 著

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◆輪廻離脱に導く仏教

[評者]岸本葉子=エッセイスト

 仏教における尊厳について、キリスト教関係者に問われたのが執筆のきっかけだ。尊厳という問題を仏教が扱うことは少ない。そこで死に際して仏教がどのような態度をとってきたかを、考察した。

 「死んだ後どこへ行くのか」と、宗教学者である著者はよく尋ねられる。輪廻(りんね)を信じたい人も、現代日本では多くなっているという。だが輪廻の説は、最終解決ではない。輪廻は煩悩に染まった世界であり、そこからの離脱をめざしてきた伝統を、仏教の歴史は持っている。

 輪廻の世界の超越のため、仏教がもともととっていた方法は、修行により煩悩を滅して悟りに至ることである。大乗仏教において、帰依という信仰の形態が生まれた。死後を阿弥陀仏に託せば、浄土へ行けるといった信仰だ。

 こうした流れを整理した上で著者は、自らの死への態度を最後に述べる。阿弥陀に身を託したその瞬間から「後」はない。「これが私の考える、仏教流の尊厳死です」

 印象深い箇所がある。死後も姿を変えてでも生きていたい。輪廻思想の源にあるこの願いが究極の願いであるならば、殺し合うことこそ究極の悪であり、「人間に尊厳ということがありうるならば、この究極の悪に立ち向かうべきなのだ」と。生きている間にすべき実践の指針をひとつ、得た思いだ。

(ぷねうま舎・2700円)

<たちかわ・むさし> 国立民族学博物館名誉教授。著書『弥勒の来た道』など。

◆もう1冊

 中島義道著『時間と死』(ぷねうま舎)。過去・現在・未来それぞれの意味を問い、死の問題に迫る「不在の哲学」。

 

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