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【書評】

森の探偵 宮崎学 著 文・構成 小原真史

写真

◆生と死の舞台を撮る

[評者]桜木奈央子=フォトグラファー

 「オリジナルな写真はオリジナルの機材から」という稀有(けう)な動物写真家の撮影方法を、著者自身が語りによって解き明かす。自作の無人カメラで撮影された写真の数々は、まるで森という舞台で動物たちが主役を演じているようにも見える。写真家は、その決定的瞬間から動物の習性や人間の関わりを鋭く読み解く。

 まず、こんなに身近な場所で動物が生きていることに驚く。都会の真ん中で生きるアライグマ、人里に出没するツキノワグマ。見えない=存在しないのではなく、人間が動物の痕跡に気づかないだけなのだ。無人カメラによる「証拠写真」は震災後の福島の帰宅困難区域でも撮影された。巨大なイノブタやニホンカモシカが主のいなくなった空き家を闊歩(かっぽ)している姿からは、自然と人間の時間軸の違いについて考えさせられる。

 動物の死骸の発見からそれが消えるまでの変遷を定点撮影した「死」というシリーズ写真がある。著者は「死にカメラを向けたことで、あらゆる生は死に支えられていることに気づいた」と言う。森の動物や昆虫が死骸に集まり、それを処理していく過程からは、その個体の死から始まる新しい「生」が感じられる。

 生と死、動物と人間、自然と文化。これらは二分化できるものではなく緩やかに繋(つな)がっていて、私たちは大きなサイクルの中で生きていることを教えられる。

(亜紀書房・1944円)

 <みやざき・まなぶ> 1949年生まれ。写真家。著書『カラスのお宅拝見!』など。

◆もう1冊 

 米田一彦著『熊が人を襲うとき』(つり人社)。ツキノワグマを追い続ける著者が多数の事故を分析し、対策を検討。

 

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