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【書評】

フリーランスぶるーす 栗山圭介 著

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◆自分の道を切り開く

[評者]広小路尚祈=作家

 バブルの香りが、まだいくらか残る時代。フリーターであった「僕」は、「ギョーカイ」の門を叩(たた)く。編集プロダクションに勤務するうち、諸々(もろもろ)の事情からフリーランスとなり、徐々に一人前になって行く。

 己の実力と人脈だけが頼りの、フリーランスという身分。一見自由であるようだが、案外としがらみも多い。やりたいことのために、やりたくないことも少々こなす。何も特別なことではない。多くの働く人と同じだ。

 作中に漂う、登場人物たちの俗っぽい虚栄心や価値観、欲望のあり方は、当時の言葉を借りて言うなら、いささか「おじん臭い」。だが、そうして描かれる人々は、とても「人間臭い」。

 時代の変化とともに失われてしまったものの中には、失われてよかったものもたくさんあるが、失うべきではなかったものも、きっとあるはずだ。

 まだ何者でもなく、もしかしたら、いつまでも何者にもなれないかもしれない人たち。また反対に、すでに何かをつかまえた、あるいはつかまえつつある人たち。そんなさまざまな人々との、友情とも愛情とも少しニュアンスの異なる、連帯感や仲間意識に、励まされたり、助けられたりしながら、自分の道を切り開こうとする姿。それはもはや、小説の中でしか会えない若者の肖像なのだろうか。

(講談社・1728円)

 <くりやま・けいすけ> 1962年生まれ。作家。著書『国士舘物語』など。

◆もう1冊 

 広小路尚祈著『金貸しから物書きまで』(中公文庫)。ブラック企業から逃げた男が見つける意外な人生の物語。

 

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